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襲撃者 〜side 音葉


 今、私の前には初対面の女性が3人と歌織さん、そして碧の5人が円を作るように座っていた。


 私の両隣には碧と歌織さん、そしてその碧のもう片側に座っているのは、彼と二人三脚を走っていた女の人だ。


 この人ずっと碧と一緒にいる……


 っと、今はそうじゃなくて


 どうしてこうなったの!?

 ホントに少し前の自分の行動は訳がわからない。


 正直なところ、私自身も自分がこんな行動に出るとは予想外だったのだ。


 最初は少し様子を見るだけの予定だった。


 でも、彼女達と仲良く食事をしようとしていた碧の姿を見た瞬間、ほぼ反射的に口を開いてしまっていた。

 それも碧以外、全く知らない人たちに対してだ。


「私たちも一緒にお食事させて下さい」


 普通ならありえない誘い、そんな言葉が発端となり今の状況へと陥っているのだった。

 うう、気まずい……


「で、改めまして……貴方たちは誰なんですか?」

 

 恐らくこのグループのまとめ役であろう女性に私は問いかけられる。

 確か彼女はリレーの時に碧のことを応援していた女性だ。

 麦わら帽子とマスクをとった姿は、私が予想していた通り美人さんで場違いにも少し見惚れてしまっていた。


 ダメだ!、今はそんなことよりこの状況をどうにかしないと……

 私はとりあえず身につけていた黒い帽子を外してレジャーシートの上にサッと置いた。


「えーと、あのぉ、なんていうか、私は碧君の友達の鈴凪 音葉って言います」


 とりあえず、碧との関係と自分名前だけは言っておかないと完全に不審者になると考えた私は真っ先にそのことを伝えた。

 しかし、頭が殆ど働いていない状況で答えたせいか、歌織さんのことをどう説明したらいいのか全く考えていなかった。


 あ、どうしよ……お姉ちゃんってことにしたら!?

 いや、流石に怪しまれるよね。歌織さん滅茶苦茶可愛らしい容姿してるし。

 となるとその逆しかない。「それでこっちが、い、妹の歌織です」


 歌織さんごめんなさい。


 私は歌織さんには申し訳ないと思いながらも、妹として彼女のことを紹介させて貰った。

 案の定、歌織さんからは睨まれてしまったが、もう無理やり合わせてもらう以外の選択肢はなかった。


 更に隣では碧がお茶を吹いていたが、気にしたら負けだ。


 あっ、妹じゃなくて、私と同じで友達として説明した方が良かったよね。

 だが、口にしてしまってからではもう遅い。


 それに、私と歌織さんの碧に対する立ち位置が同じなのは少しね……って、私なに考えてるのよ。

 ホントに最近の私は何処かおかしい。


 しかし、ここで予想外の事態に陥ってしまう。


「んー、どっかで見たことある顔なんだよなぁ……あっ、もしかして、あの時のお姉さんでしょ!」


 そう言って歌織さんを力強く指差したのは二人三脚の女だった。


 えっ、歌織さんこの人と知り合いなの?

 すると、歌織さんも何かを思い出したようにハッとする。


「あっ、あの店前に居た怪しい人」


 あのお店?

 まぁ、よく分からないけど顔見知りなんだ……


 えっ、それじゃあ歌織さんのホントの年齢知ってたり?

 いやいや、流石にそれはないよね。二人の反応を見る限り、少し顔を合わせただけの関係に見えるし大丈夫、大丈夫。


「やっぱり!、でもあの時は22歳だとか言ってなかった?」


 嘘っ、なんでピンポイントで年齢だけ知ってるのよ!?

 だって名前すら知らなかったじゃん。


 私は心の中で頭を抱えた。

 いっそのこと私の年齢が22歳以上だってことにしたらどうだろうか?

 流石に最低で7歳も盛るのは私じゃ無理な気がする。


 だったら歌織さんなら?


 15歳と言っても通用する!私の中にそんな確信があった。

 歌織さんも言葉に詰まってることだし……


 歌織さん、本当にごめんなさい。


「強がりなんです。妹は少し負けん気な性格で、よく背伸びしちゃうタイプなんです」


 もちろん、そんなわけがない。


「おと、オネェちゃん……」


 音葉ちゃんと言いかけながらも、私の話になんとか合わせてくれた歌織さんだったが、いろいろと怖くて、もう目を合わせられなかった。

 これ、絶対後で怒られるやつだ。


「なるほどな、道理で歳下に見えたわけか。

 可愛いなぁ……見栄張るタイプだったのな」


 だが、その犠牲があったからこそ彼女は納得してくれた。

 

 にしてもこの女、危険過ぎる。

 今だってサラリと歌織さんの嫌がるワードを言ってのけた。

 元はと言えば悪いのは私だ。でも、それを踏まえてもいろいろと苦手かもしれない……


 それから碧のファインプレーでなんとかこの場を乗り切ると、その流れで、それぞれの自己紹介をすることとなる。


 そして、その自己紹介から分かったことはこの場を仕切っていた歳上の美人さんは碧のお姉さんの玲奈さんだったということ。

 モデルでもしてるんじゃないかと思えるルックスに思わず引き込まれてしまいそうにもなるが、碧のお姉さんと知ればそれも当然だと思った。

 

 だって、碧も凄くイケメンなんだから……

 

 しかし、勿体ないことに玲奈さんは定食屋さんで働いているらしい。絶対人気出ると思うんだけどなぁ。


 そして、その隣にいる少しクールな雰囲気を纏っている美女、天音 雪さんも一緒に働いているらしい。

 この二人の影響でその定食屋はきっと売れ行きが右肩上がりになっていることだろう。


 ホントどうなってるのよ、その定食屋……

 

 天音さんもかなりの美女だったが、何故だか彼女を見ても心がざわつくことはなかった。

 なんていうか、お姉さん繋がりで碧との関係はそこまで深くなそうだし……


 それで、やっぱり1番の問題はこの女、東雲 風花。

 今でもちゃっかり碧の隣に座り、少し体を寄せている気がする。見た目は他の二人ほどとは思わないけど、十分に魅力のある容姿をしているのだ。


 そして、碧も碧でこの女には心を開いているように見えた。


 それが私にとってはかなり不快だった。

 あれ?……私、いつからこんなに性格悪くなったんだろ?


 別に碧と東雲さんが仲良くしてるだけ、私と歌織さんみたいな関係なだけなのに……やっぱりなんか嫌だ。


 それに私と歌織さんは同性で碧と東雲さんは異性、その時点で全然同じなんかじゃない。


 とにかく、今の私では東雲さんとは余り仲良く出来る気がしなかった。


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