孤高を貫く俺にとって息を合わせる競技は難解です ①
放課後、俺たち二人は運動着に着替えて練習のために学校のグランドに来ていた。勿論だが部活動を行なっている場所を避けての練習になるため、使えるスペースとしては余り広くない。
他にも多数の生徒達が隙間を見つけては既にそこで練習を始めていた。
もちろん、その中には全員とまではいかないがウチのクラスメイト達の姿もある。
そして、俺たちはというとクラスメイト達からは少し距離を離した場所に来ていた。
「それじゃあ、始めるか」
「あのさ、少し気になったんだけど、アンタなんでそんなに気合が入ってるのよ。少し前まではそんなタイプじゃなかったじゃん?」
「いや、普通だと思うけど……
東雲はあんまり俺のこととか見てなさそうだし、気づいてなかっただけだろ」
いつも斗真と一緒に来ていることさえも知らなかったし……
少なくとも他の生徒達は俺のことを認識はしていた。確か俺を見て金魚の糞だとか、いろいろと言ってたもんな。
「違うくて、最近はよく見てんの」
「へっ?」
もしかして俺に対して復讐の機会を伺ってたのか?
恨まれる覚悟はしてたけど、まさかここまでとはな。
「あっ、いやいや、そう言う意味じゃねーし。勘違いすんなっての。
……まぁ、でも、だから気のせいかもしれないけど、そう感じた。」
「そうか、でも残念だったな、気のせいだ」
そうは言ったものの、実は東雲がそう感じてることは案外当たってたりもするのだが、いちいち説明する必要もないだろう。
「そう、気のせい……ね」
「さっ、それより練習始めようぜ」
「分かったわ、それでこれ。先生から貰っておいたから」
東雲が渡して来たのはゴムで作られたバンドだった。
なるほど、これを足首につけて走るって感じか。
それにしても意外と小さいな、この中に足が二つも入るものなのか?
とりあえず、その場にしゃがんで自分の右足を通してから東雲の方を見る。
「じゃ、次は東雲の番だから足上げてくんない?」
「ほいほい、ちょっと肩借りるわ」
そう言って彼女は横向きになり俺の肩に左手を置いて軽く左足を上げる。
くそっ、初めだからかバンドが全然伸びない。
もう少し右足を近づけて……
「よし、その辺で下ろしてくれ」
それから降ろされてくる東雲の足をゴムバンドに通すと、足首ぐらいの位置に調整した。
「なんか、キツくない?」
「しょうがねーだろ、俺だって我慢してんだよ」
「まっ、いっか、とりあえず向こうの空いてるとこに移動しよ」
「分かった、——って、うぉい、まだ立ってないから」
「ひゃっ!?」
俺が返事をしてすぐに移動を開始した為、東雲に足を強く引っ張られて大きくバランスを崩してしまう。
それは東雲の方も同じようで後ろにひっぱられ俺の方へと倒れ込んできた。
そして、そのまま東雲の背中側を受け止めながら、地面に背中を撃ちつけた。
「ぐへっ!?」
「痛ったぁ……おい律真、何してんだよ」
「それは、こっちのセリフだ」
「いや、どう考えても今のはアンタが悪いでしょ!」
「わかった、分かったから、そんなことはもうどうでもいいから。それより結構重いんだ。早くどいてくれないか?」
「へっ!?、あっ、そうかもね……って重いってどーゆーこと!?」
思わぬとこで失言をしてしまったようだった。
でも、事実だ。勢いよく倒れてこられたせいで、結構こっちは体に負荷がかかってる。
なんならそれぐらい許して貰えても、いいんじゃなかろうか?
「すまない、思ったことをそのまま伝えただけで特に悪気はなかったんだ」
「悪気はなかったって……それに私、別に重くないし、身長からした体重も普通に適正だしアンタ、失礼にも程があるでしょ!」
バンドを気にしながら素早く立ち上がった東雲は、顔を赤くしながら抗議してきた。
確かに東雲の言う通り、彼女は太ってなどいない。
なんなら、スタイルの良い部類に入るだろう。だがしかし……だいぶ前から思っていたがいかんせん胸の強調が激しい。
音葉も決して小さくはないが、それをも遥かに凌駕する大きさだった。
って俺は何を考えてんだよ……
別に変態ではなかったつもりだが、これが男の性というものなのか。
それから俺も立ち上がって、東雲と横並びになる。
「ホントに悪かったよ。あんまり女友達とかいないからさ、こういうのは苦手なんだ」
「あんまりじゃなくて、一人も、の間違いでしょ。そんなとこで見栄張らなくてもいいっての」
それから続けていくらかの小言を言われたが、何とか許してもらえたようだ。
でも甘いな東雲よ。俺には音葉っていう女友達が居るんだからな。




