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テーマパークデート④


 お化け屋敷……


 楽しみではあるが、ここのモノはネットでチラっと見た感じではかなり怖い部類らしい。

 しかも、かなり大きな造りになっていて、全てが終わるまでおよそ40分近くかかる。ちょっと普通に長くないか?


 つまりその間の時間はずっと恐怖を感じていなければならないというわけだ。

 うーん、正直お化けとかは信じてないから大丈夫なんだけど、脅かすための仕掛けが待っているとなると怖いかもしれない。


 それにしても、音葉は随分と余裕そうだよな。

 得意じゃないかも、と言っておきながら足取りはかなり軽いし、表情からもワクワクしてることが見てとれた。


 本当は自信があるんじゃないのか?


 そう思って音葉の方を見てみると、ニコッとした笑顔で返される。

 いや、どういう表情だよ。ってか可愛いな、おい……

 

 目的地に到着すると病院の造りをしたようなボロい見た目の建物が、はっきりと見えた。それは俺の想像を軽く超えてくる。


「ヤバいかもな」


「う、うん。かなり雰囲気あるね……」


 建物を一言であらわすと本当にホラー映画とかに出てきそうな感じとでも言えばいいのだろうか。

 とにかく入るのを躊躇うレベルだった。音葉もそんな建物を見て少しだけ怖気付いているように見える。


 入り口のところに表示されていた掲示板には30分と書かれていた。要するに現在の待ち時間は30分ほどらしい。

 そして、その待ち時間の間にクルーの男性から一つのパンフレットを受け取った。

「鞄にしまわず、中に入るまでは手に持っていて下さいね。中は自由に見て頂いて結構です」

 彼曰く、どうやらこのお化け屋敷の設定が書かれているらしい。


「うわっ、なんか開けるのを躊躇うデザインだな」


「そ、そうね……」


 改めて受け取ったものを見ると、お札のような柄になっていて、解放厳禁と誰かの血で描いたような赤で表示されている。

 まぁ、クルーのお兄さんは是非開けてみて下さいと言っていたので、恐る恐るパンフレットの端に手を掛けた。


「えっ、ホントにあけるの?」

「ああ、開けてみて下さいって言ってたからな」

「それはそうだけど……」


 なんだかパッとしない音葉を不思議に思いながらも、俺はペリペリと開封していく。


「あれ!?なんも書かれてない」

「ほんとね……」

 

 ってか、さっきから音葉との距離感が近い。いや、まぁ一つのパンフレットを二人で覗いていたわけだから当然のことなんだけど、彼女が近づくたびに甘い花のような香りが漂ってくるから心臓に悪い。

 

 そんなことに気を取られながらも、俺はジグザグに折られていたパンフレットをいっきに引き延ばした。


「えっ!?」

「何コレ……誰かの髪の毛?」


 変わらず何も書かれていない中身だったのだが、最後の折り目辺りに髪の毛の束のようなものが貼り付けられていた。


「そ、そうみたいだな」


 俺はそれに触れることなく、そっとパンフレットを閉じた。

 うん、見なかったことにしよう。

 

 音葉もそれで良かったのか特に何かを言われることはなかった。多分だけど、このお化け屋敷ここから始まってるんだわ。

 本当に凝ってるよなぁ……

 

 俺はおそらく存在するであろうこの後の展開に少しだけ憂鬱な気分にさせられる。

 まだ入ってすらないのに、怖いとか反則だろ。


「音葉、大丈夫そうか?」

「う、うん、大丈夫だと思う多分……」


 音葉は少し自信なさげな反応を見せる。あまり得意ではないと言っていたのは本当だったのかもしれない。

 だからといって俺が守ってやるなんてクサイ言葉を言えるはずもなかった。それに、俺はお化け屋敷では先に進むより後からついていきたいタイプなのだ。

 理由は単純に怖いから。


 何度も言うがお化けなんて信じていない。でも、驚かされるのは得意でないと自負している。

 聞く話によると、途中でリタイア出来るように別に通路が設けられているようだから、最悪はそこから脱出するつもりだ。

 

 カッコ悪い姿を見せてもいいのかって?

 そりゃ、出来るなら音葉の前では遠慮願いたいのが本心だ。そこは男としてカッコいい姿を見てほしいに決まってる。

 でも、無理なものは無理だ。情けない話だがそこは許して欲しいところである。


「二名様で間違いないですか?」

「はい、そうです」


「それではお楽しみ下さい!」


 それから、時間が経ち俺たちは中へと案内される。

 俺は隣にいる音葉の存在を何度も確かめながら、地獄の入口へと足を踏み入れた。



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