東雲 風花の葛藤 その① 〜side風花
私にとってあのインキャ……じゃなくて、律真 碧との出会いは最悪だった。
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その日は同じくクラスの小藤 明宏、アキ君の方から私に連絡があった。
『今日も昨日と同じようにいつもの場所に集合で!』
それは一見すると普通の呼び出しの文章だったが、遠回しに、私と今日も身体の関係を持ちたいという意味であることはすぐに分かった。
私はそのことに少し気持ちを高揚させて、素早く『了解!!』というメッセージを送る。
それ程までに彼との関係は刺激的なのだ。
もちろん私が好きなのは斗真だし、こうしてアキ君と会う事に罪悪感を全く感じない訳じゃなかった。
ただ、その罪悪感を差し置いたとしても、彼との関係は魅力的で、なかなか辞められない。
誰かにバレるかもしれないというドキドキ感、それに行為をしている最中の快感、これが最高の一言に尽きた。
噛めば噛むほど味が出てくるガムのように、すればするほど私はそれに依存させられていく。
あれは、そう、一月半ほど前の2年に上がって間もない頃の話、始めはアキ君からの誘いだった。
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ある日、とあるSNSより小藤からダイレクトメッセージが届く。
内容は私のことが気になるから一度だけでも会って欲しいとのこと。
しかし、私は1年の頃から斗真のファンクラブの主力として活動してきた。
そんなこともあって、あの時の私は斗真とは別のグループであった彼のことを無視していた。
私は斗真一筋なんだから、勘違いされるようなことしちゃダメよね。
けれど、メッセージは次の日も、また次の日も届く。
それも全て丁寧な文章で誠実さを感じさせるものだった。
すると、次第にいくらなんでも無視し続けるのは可哀想だと思うようになってきてしまう。
一度会うだけなら、別に良いよな……
そんな想いが私の中に生じた。
そう考えて実際に会ってみると、アキ君は私の予想以上に良い人だった。
最初は斗真に対抗心を燃やし、敵対心を露わにしていると感じていた為、それなりに警戒していたのだが、時間が経つにつれ会話が弾みだすと、普通に楽しめるまでになってしまっていた自分がいた。
軽い食事を終えた後には彼の印象はガラリと変わっており、アキ君、凄く良い人だったなぁ…
斗真には敵わないけど、彼とは違って別の魅力があるように感じるっていうか、見た目に反して滅茶苦茶紳士的だったし。
そんなことを思うようになる。
すると、一度だけだと決めて会っていたことを忘れてしまい、別れ際には次に会う時の予定まで立ててしまっていた。
もちろん、会う際には一応クラスの人達にバレることのないように最善の注意をしながらだ。
流石に不味いよね、あれだけ斗真のこと好きって言っておきながらこんなことするなんて……
そんなこと、頭の中では分かっていた。
そして、3度目の密会の後、私はついに彼に体を許してしまう。
彼からの強い要求に断りきれなかったのだ。
あの時は斗真との関係で後悔も少しだけあったが、それ以上に気持ち良さが勝ってしまっていたと思う。
それからというもの、彼とは学校でも体を重ね合わせる仲になっていく。
斗真は優しく、いつだって私の一番だったが、その反面、刺激という部分が大きく欠けていた。
彼の声でドキリとさせられることはあっても、それ以上でも以下でもない。一年以上関係を持った今でさえも、なかなか進展せず、ずっと一定のまま。
だからこそ、私の中のモヤモヤが少しずつ溜まっていたのだ。
それら全てをたった2週間程度で解決し、私の心を満たしたのがアキ君。
そういう構図が出来上がっていた。
皆んなに隠れながらお互いを求めて、寄り添い、行為を楽しむ。
そして、それらを終えた後は背徳感に包まれながら何事もなかったように斗真の親友として過ごした。
何故だか、それがまた心地良い……
もしかしなくとも、2大イケメンと称される2人と深く繋がっている自分に酔ってしまっていたことは言うまでもない。
※※※
私が、学校で4度目の密会の約束をしていたそんな時、唐突に呼び出され、私とアキ君の関係を知っていた彼に斗真から離れるようにと脅される。
変わらず斗真のことが好きだった私は、それだけは辞めて欲しいと頼んだ。
でも、目の前の男、律真 碧の決意が揺らぐことのないまま話が進んでいき、最終的には私の頭を整理させるためという名目で、少しの時間、猶予を与えられた。
だから、私はその時間でどうするのが最善なのかを考えに考えた結果、アキ君に助けを求めることを選択する。
それからはアキ君に事情を全て話し、どうにかして欲しいと頼み込んだ。
すると、それを了承する返事が暫く経ってから返って来た。
だから、もう、これで大丈夫だと安心出来る。
何せ相手は1年の頃、同じクラスに居たような気がする程度の影の薄い男子生徒。そんなヤツぐらいならアキ君がどうにか出来ないはずないのだ。
そんな考えを持っていたため、相談さえしてしまえば全てが解決する、私はそう思っていた。
だが、現実はそうはならなかった。
助けてくれると言っていたアキ君。
まさかその彼が私との関係を暴露してしまうとは予想外にも程があったのだ……




