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激闘、ビーチバレー


「なんで私がこの女と……」


「それはこっちのセリフです」

 

 俺から見て、ネットの奥にいる音葉と東雲が互いを睨みあっていた。


「もう、風花ちゃんも音葉ちゃんも同じチームなんだから仲良くしてよね」


 そんな二人を見て姉さんが少し困った顔をしているのが少し印象的だった。


 それに対してこちら側はずいぶんと平和なもんだ。


「碧君、よろしくね」


「ああ、こっちこそ宜しくな」


「向こうはなんだか大変そうね……」


 天音さんは少し呆れた表情で呟いた。


「そうだな……ホント仲良くして欲しいよ」


 俺がそう言うと、少しジト目で見られたような気ががしたが、多分気のせいだと思う。


「まぁ、対戦相手になってやり合うよりかはマシなのかもね」


「それもそうだな」


 そこでふとあることが気になった。

 音葉ってスポーツ出来るんだろうか?


 東雲は同じクラス出し、運動神経が良いことは知っている。しかし、俺は音葉に関しての情報を一切持ち合わせていなかった。


 見た感じ、勢いだけは東雲に負けてないけど……


 そんな、いがみ合っている二人を見ていると、天音さんは続いて姉さんの方に視線を向けた。


「この状態なら、あの二人は放っておいても大丈夫だと思う。あとは……そういえば、玲奈さんって運動も出来る感じ?」


 俺は悩むことなく首を縦に振った。


「残念ながら……な。正直、姉さんがハイスペック過ぎて本当に姉弟なのか自分でも不安になるよ」


 小、中、高とマラソン大会は基本的に一桁、特に部活はしていなかったが、助っ人としていろんな部に混ざっていた、なんて噂も聞いたことがある。


 何そのチート性能、と誰もが思ったことだと思う。

 事実、家族である俺もそう感じていた。


 それに比べて俺は、足が少し早かったくらい。

 体育祭でも二人三脚で転んだ上に、棒引きでも盛大に滑ってしまった。


 本当に血が繋がってるのか疑いたくなるほどに、ロースペックなのだ。


 もしかして俺って養子だったとかか?

 いやいやいや、それは流石にないか……ないよな?


「流石は玲奈さんってところね。今日に限っては悪い意味で期待を裏切らないわ。

 あっ、……それと碧君が心配してるその部分に関しては安心していいと思うよ。私はちゃんと姉弟だって感じてるから」


「そ、そうか?……とにかく、そう思って貰えてるなら光栄だな」


「そうそう、それに私はもっと自分に自信持っても良いと思うけど」


 天音さんは真剣な表情で言ってくれたが、哀しいことに自信が持てるところが思い当たらない。

 考えれば考えるほど、ダメな部分が浮き彫りになって行く気がする……


 ああ、これは陰キャラ故の思考なのか?



「よし、それじゃあ試合始めよっか。人数が少ないからサーブはそっちに譲ってあげるわ」


 お互いに配置につくと、姉さんが天音さんに対してゆっくりと下からボールを投げた。


「ありがとうございます。

 ……碧君、サーブどうする?」


 天音さんはボールをキャッチした後、こちらへと顔を向けてきた。


「ううん、俺は後でいいや。

 先に天音さんがやってくれ」


「分かったわ、任せて!」


 なんか、スゲェ信頼出来る言葉だな。

 正直、一度は俺も言ってみたいけど、バレーは体育の授業でしかしたことないから少し厳しい。

 ビーチバレーに至っては初めてだ。


 ——って、多分だけど天音さんも一緒だよな……


 そんな中、天音さんは迷いを見せることなくサーブ位置の方へと行くと、簡単にサーブラインを超えてしまった。

 そして、そこで止まることなく。更に奥の方で足を止める。


 サーブラインまではそれなりに距離があった。


 これって、もしかして……


 とあるサーブが頭の中をよぎったタイミングで、天音さんはボールを大きく斜め前の上空へと投げた。

 そして、持ち前の脚力を活かして前進すると、タイミングよくジャンプをして高い打点でボールを捉える。


 バチンッ!!


 腕や手首を巧みにしならせて叩き込んだそれは、一瞬にして俺の横を通り過ぎてネットを超えると、音葉と東雲の間の地面へと深くめり込んだ。


 嘘だろ……あの速度でコントロールも完璧かよ。

 恐らく天音さんは姉さんのいるところを避けて、連携のとれていない二人の間を狙ったのだろう。


 結果的に音葉も東雲も全く反応出来ていなかった。


 このサーブってバレー部じゃない人でも習得可能なんだな……

 

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