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五話「ミケラの日 04」

「あそこが私のお家だよ」

 ミケラが指さしたのは王国では標準的な家族向けの家だ。

 同じような家が並ぶ一角にその家はあった。

「ただい・・・」

「ただいま~~~っ」

 ロレッタが扉を開けると待ちきらなかったミケラが、開いた扉の隙間から家の中に飛び込む。

「ミケラ」

 部屋の隅で絵本を読んでいたサクラーノが立ち上がる。

「サクラーノ」

 二人は走り寄ると勢いよくお腹同士をぶつけ合う。

 二人はきゃっきゃっ笑いながら、部屋の真ん中でお腹を何度もぶつける。

「あんた達、毎回それやってるけど楽しいの?」

「楽しい~~!」

「楽しい~~」

 二人はきゃっきゃっと笑い合うのを止めない。

「あっそう、お子様の思考は理解できない」

 ロレッタは少しめまいを覚えたが、二人の頭をむんずと掴み、

「ほらほら、家の中で騒ぐとお母さんの身体に良くないでしょ」

 とりあえず止める。

「それにミケラ、お母さんに挨拶に行ってないでしょ」

「あっ、そうだ」

 サクラーノとじゃれていてすっかりと忘れてしまっていたが、大事な話だ。

「マオちゃん、行こう」

「予も良いのか?」

「うん」

 ミケラがマオの手を引いて奥の部屋の扉の前に行く。

「お母さん」

「ミケラ?」

「うん」

「お入りなさい」

 ミケラが扉を開くと痩せ細った優しい笑みを浮かべる女性が、ベッドから身を起こしていた。

 タマンサだ。

「お母さん」

 ミケラが部屋に飛び込むとタマンサにしがみつく。

 マオはタマンサを見た瞬間、おやっと思った。

 タマンサの胸の奥に黒いもやのような物が脈動しているのが見えたからだ。

「あれは闇か?普通なら見える程大きくなることは無いのじゃが」

 心の闇というのは多かれ少なかれ誰もが抱えている。

 大抵は心の底に秘め、外に出ないように封印しているので、魔王であるマオの目でも見えないことの方が当たり前なのだ。

 それが見えてしまうまで大きくなっている。

「あれほど大きくなってしもうたら、もう心ではなく身体を蝕んでいるはずじゃが」

 心の闇は心を蝕むが、見える程に大きくなってしまうと身体の方を蝕み始めるのだった。

「そうか、それでこのおなごは痩せ細ってしまっておるのか」

 マオはタマンサがベッドに伏せているのを納得した。

「お母さん、お母さん」

 ミケラは甘えるようにしがみつく。

「ミケラはいつまでたっても甘えん坊の赤ちゃんね」

 タマンサはミケラの頭を優しく撫でた。

「ミケラだけずるい」

「サクラーノ、あなたもおいでなさい」

 言われてサクラーノもタマンサにしがみついた。

「もう、二人とも甘えん坊なんだから」

 嬉しそうに微笑みながらタマンサは二人の頭を撫でた。

「お母さん、大好き」

 二人の声がハモった瞬間、マオは不思議な光景を見た。


                      (Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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