五話「ミケラの日 02」
「おぬし達、これからどこへ行くのじゃ?」
マオが聞く。
「お家に帰るの」
ミケラが嬉しそうに返事をした。
「家?ミケラの家は城ではないのか?」
一度、城のミケラの部屋に案内されたことがあるので、マオは城がミケラの家だと思っていた。
「違うもん、お城はわたしのお家じゃないもん」
その言葉にロレッタが困った顔をする。
「ミケラ、あなたの本当のお家はお城って言ったでしょ」
注意するが、
「違うもん、お母さんやサクラーノがいるお家がわたしのお家だもん」
とぷいっとそっぽを向いてしまう。
ロレッタはため息をついて諦める。
ミケラは普段は聞き分けの良い子なのだが、変なところにスイッチがあり、一旦そのスイッチが入ってしまうと途端に聞き分けが悪くなってしまうのだ。
そうなると納得するまで動かなくなるし、納得させるのにも時間がかかる。
ここで無駄な時間を費やしたくない。
「はい、はい。それじゃお家へ帰りましょ、お母さん待っているわよ」
「うん」
ミケラとロレッタは手をつないで歩き、その後ろにマオが続く。
離れた場所からミケラ達を見守る影があった。
「黒妙、お妃様を怒らせてどうしてくれるのよ。帰ったらまた正座で一時間お説教よ」
「ごめん、姉ちゃん」
黒妙は姉に謝る。
「あのくそ婆、いつかぶん殴ってやる・・・アタッ」
白妙のげんこつが黒妙の頭に炸裂した。
「あなたがそんなんだから怒られるのよ。それに巻き込まれる私の身にもなってよね」
「そんな姉ちゃん、二人きりの姉妹なんだから一蓮托生で」
「いらんは」
白妙はつい怒鳴ってしまい、近くを歩いていた住民達の視線が集まる。
「すみません、すみません」
「なんでもないんだよ、ホント、なんでもないから」
白妙がペコペコと謝り、黒妙が通行人達を散らす。
「もう、黒妙のおかげで」
「怒鳴ったの姉ちゃんじゃん」
二人は別の場所に移動していた。
「何を・・・てっ、やめましょ、また同じことの繰り返しになるわ」
黒妙をもうんうんと頷く。
「それはそうと、今日は虎次郎の旦那はいないの?いつも金魚のフンみたいに、姫様の後をついて歩くのに」
「虎次郎様は砦の方だそうです」
虎次郎が砦に呼ばれたと聞いて驚く黒妙。
黒妙には聞かされていなかったようだ。
「虎次郎の旦那って言えば化け物級に強いのに、それを呼び出すなんてそんなにやばいのが出たの?」
「みたいね」
「やばいよね、本当にやばいよね」
慌てふためく妹に優しく、
「大丈夫、まだタマーリン様がいるから」
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