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五話「ミケラの日 01」

「白妙、黒妙おいでなさい」

 早朝の宮廷内にお妃様の声が響く。

「御前に」

 白と黒の影がお妃様の前に傅いていた。

「今日は何の日か判ってますね」

「はっ」

 白と黒の影は同時に返事を返す。

「ではいつものようにお願いします」

 その言葉と同時に二つの影は消えた。

 お妃様は満足そうに微笑むと、

「頼みますよ」

 それだけ言うと何事も無かったように踵を返す。

「姉ちゃん、お妃様もミケラ様には甘いよね。護衛なんて虎次郎の旦那一人で間に合うのにさ。過保護なんだよ、過保護」

「黒妙、お城の中では姉上と呼ぶように言ってあるでしょ。それに、どこで誰が聞いているか判らないのよ、滅多なことを言うものではないわ。気をつけなさい」

「大丈夫、大丈夫。近くいるのはお妃様だけだし。お妃様ももう歳だから聞こえない、聞こえない」

 黒妙はヘラヘラ笑う。

「聞こえてますよ」

 お妃様が振り返って怒鳴る。

「やべ、年寄りのくせに地獄耳でやんの」

 突然、黒妙の潜んでいた天井の影の近くに向かってかって何かが投げつけら、天井に当たって廊下に落ちる。

 それはお妃様が履いていた靴だった。

「げっ、居場所ばれてる」

 自分のすぐ側に靴を投げつけられて驚く黒妙。

「黒妙、逃げるわよ」

 白妙の判断は速かった。

 お城の窓から飛び出す白妙。

「姉ちゃん待って」

 その後を追って慌てて窓から外へ飛び出す黒妙。

 二人は街へ向かって全速力で逃げた。

「もうあの二人ったら」

 二人の後ろ姿を見ながら、もう片方の靴を手にしたままお妃様はため息をつく。



「今日もいい天気だね」

 倉庫の女将さんは倉庫の前で大きくのびをする。

 ふとお城の方を見ると、お城に続く道からロレッタとミケラが手をつないで歩いてくるのが目に入った。

 ミケラはいつも着ている上等な服ではなく、街の子供が普段着るような服を着ている。

「そうか、今日はその日なんだね」

 女将さんは頷くと、

「マオ、マオ、ちょっとおいで」

 倉庫の中に怒鳴ってマオを呼ぶ。

「何じゃ女将、予に何か用事か?予はまだ武茶士とクロに今日の予定を伝えねばならないのじゃが」

 マオも結局、倉庫で働くことになった。

 しかも、なぜだか武茶士とクロの上の主任として。

「それはもういいよ。それより、あそこにミケラ様とロレッタがいるのが見えるかい?」

「ああ見える」

 マオは頷く。

「これを持ってミケラ様と遊んでおいで、今日は上がりでいいから」

 女将さんはマオに甘い香りのする袋を渡し、大きな手でマオのお尻を叩いて押し出す。

「な、なんでじゃ?」

 マオは訳がわからず女将さんの方を振り返るが、

「いいからお行き」

 と怒鳴られ、マオは首をすくめると翼を開きミケラに向かって飛ぶ。

「あっ、マオちゃんだ」

「マオちゃ~~~~ん」

 ミケラがマオに両手を振る。

 マオはミケラとロレッタの前に降り立つ。

「何よマオ、仕事はどうしたのよ」

 ミケラが一度お城の自分の部屋にマオを連れてきたことがあるので、ロレッタとも顔見知りだった。

 倉庫で仕事をしているのはその時に聞いたのだ。

「女将さんがこれを持って、ミケラと遊んでこいと言ったのじゃ」

 マオは女将さんから渡された、甘い香りのする袋をロレッタに差し出した。

「あっ、この匂いは」

 ミケラが袋に鼻を押しつける。

「こら、ミケラ。こんなところでみっともない」

 ロレッタが袋をマオから受け取ると、ミケラが匂いを嗅げないようにしっかりとガードしてしまう。

「あ~ん、お姉ちゃん、お姉ちゃん」

 ミケラは袋を取ろうとロレッタの周りでピョンピョンと跳び回るが、袋に手が届かず取ることが出来なかった。

「ダメよ」

 と最後にロレッタに睨まれて諦める。


サブタイトルの付け方を変えてみました。


                  (Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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