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魔王襲来 その39

後日談


 数日後、武茶士の家の扉を叩く者がいた。

「武茶士、客だぞ」

「悪い、手が離せないから代わりに出てくれ」

「仕方ないのう」

 マオはやれやれと肩をすくめる。

 鬼ごっこの後、モモエルが楽隊の映像を魔法投影機から流したところ、さらに盛り上がり、お祭り騒ぎは夜まで続いた。

 ミケラは夜になる前に帰ったが、残ったメンツでお祭り騒ぎを楽しみ、流れでマオは武茶士のところに転がり込むことになったのだ。

「魔王と勇者が一緒に暮らすってのも何だかな」

 と思ったりもしたが、一人で暮らすには広すぎる家だったので「まっいいか」ということで武茶士は納得した。

「今開けるぞ」

 マオが扉を開くと、サビエラが立っていた。

「武茶士様をお迎えに上がりました」

 と言われ、マオはしばらく考えるが、

「おお、そう言えばあやつはそんな約束をしておったな」

 鬼ごっこの日、武茶士はモモエルの研究所に行く約束をしたのだ。

「お~い、武茶士。サビエラが迎えに来たぞ」

 マオは大声で武茶士を呼んだ。

「サビエラ?ああ、約束今日だったか?」

 すっかり忘れていたようだ。

「済みません、忘れていました。今、支度しますから」

 奥から慌てて武茶士が出てきてサビエラに謝る。

「そのままでかまいませんわ、うちの者も全員研究着ですし」

「そうですか、ならこのままで」

「宜しかったら、あなたもどうぞ」

 サビエラはマオも誘う。

「予もよいのか?モモエルには世話になったからのう、誘われれば喜んで行くぞ」

 マオは行く気満々になる。

「はい、普段は研究室に籠もってばかりいるので、お客様は来れば皆喜びます」

 サビエラに誘われ、マオもついて行くことが決定。

 王城の門を抜け、脇の道をぐるっと回ると王城の裏手の離れた場所に白い頑丈さを優先した建物があった。

 白い建物は近くで見るとあちこちに補修した後がある。

「なんだか、あちこち直した後がありますね」

「はい、研究を失敗してたまに爆発が起きることがありますから」

 サビエラはさらっと答える。

「ば、爆発・・・だからお城から離れた場所にあるのか」

「はい、もしもの時はお城が盾になって街に被害が出ないようになってます」

 またしてもサビエラは怖いことをさらっと言う。

「あはははは」

 武茶士は乾いた笑いをするしか出来なかった。

 その会話の横でマオはあちこち補修してある建物を不審そうに見つめていた。

「さっ、奥へどうぞ」

 サビエラが入り口の扉を開け、武茶士とマオを奥へと案内する。

 入り口の先はホールになっていて、テーブルが置かれ既にモモエルと研究員達が席に着いていた。

「お帰りなさいサビエラ・・・あらあなたも来たのね、いいわよ、歓迎するわ。料理は多めに作ってもらったからたくさん食べていってね」

 モモエルは突然のマオマオの来訪を歓迎する。

「さっ、みんな席に着いたわね。それでは異世界からのお客様に乾杯」

「カンパ~~イ」

 研究員達も武茶士とマオもグラスを手にして乾杯をする。

「おお、これはなかなか美味いのう」

 マオはグラスの中身を一口飲んで感激した。

「うふふふ、王家に伝わる秘蔵のジュースよ。今日はお妃様にお願いして特別に分けてもらったの」

 研究員達もモモエルもこの後研究に戻るので、お酒ではなくジュースで乾杯だったのだ。

「この料理も美味しい、皆さんいつもこんなに美味しいものを食べているんですか?」

「それもお妃様が勇者様にって、宮廷料理を運んできてくれたのよ」

「へぇ、お妃様ってミケラ様のお母さんですよね?ミケラ様と同じで優しいだ」

 その言葉にマオ以外の顔が一瞬引きつる。

「いや、予も一瞬見ただけじゃが、あの御仁はなかなか豪毅な方じゃぞ。あのタマーリンの襟首を掴んで引きずっていったからのう」

「あのタマーリンの・・・すげぇ」

 タマーリンの怖さを身をもって知っている武茶士は、心の底から感心した。

「その話は後にして、さっ、食べて食べて」

 モモエルが食事を勧める。

 その後、食事は和やかに行われた。

「食事も終わったことだから、今度はお話を聞かせてくれる」

 モモエルが欲しいおもちゃを目の前にした子供のような目で武茶士を見る。

「コホン、モモエル様、ヨダレ、ヨダレが垂れてますわよ」

 サビエラに言われて、モモエルが自分の口に触る。

「あらやだ、わたしとしたことが」

 慌ててハンカチを探したが見つからないようだ。

「もう仕方ないですね」

 サビエラがテーブルの上のナプキンを取ってモモエルの口を拭いた。

「ありがとう」

「それと、お話を聞くなら別の場所がいいですよ。ここに居座られると、片付けが出来ませんから」

 サビエラは横目でホールの目立たないところに待機する宮廷給仕たちの方を見た。

 言われてモモエルは素直に頷く。

「そうね、談話室に行きましょう」

 モモエルの案内で武茶士とマオは談話室に移動した。

 談話室のテーブルの上には鬼ごっこの中継に使われた一つ目コウモリが置かれている。

「これ凄いですね、俺が元いた世界にも似たような奴が有ったけど、こんなに静かに飛ばなかったですよ」

 褒められてモモエルがにマットを笑い、武茶士の言葉に一緒に付いて来た研究員が食いついてきた。

「そのあたり、もっと詳しく」

「えっと、ドローンて言うんですけどプロペラという奴を回転させて飛ぶんで音がけっこう出るんですよ。モーターというのでプロペラを高回転で回すので、モーターの音がどうしても出るそうです」

 プロペラやモータについても聞かれたが、ドローンに関してはネットの配信動画を何回か見た程度なのでそれほど詳しいわけではなかった。

「でも、音はうるさくても機動性はドローンが上かな、上昇は断然早いですね」

 一つ目コウモリは羽で飛ぶので急上昇が苦手で機動力もドローンより劣る。

「それは面白いな・・・プロペラか」

「モーターというのにも興味を引かれる」

「音は消音魔法の組み合わせでなんとかなるかもな」

 研究員たちは武茶士の話を聞き逃すまいと熱心に目を取る。

「そうそう、そちらではどんな使い方をしていたの?」

 モモエルもメモを取りながら使われ方を聞いて来た。

「そうですね、鬼ごっこの時のように色々な場所を写したり、災害現場で人の行けないところに行って状況を確認したりとか・・・あと、山の遭難した人の捜索に使われていたな」

「おお、それは新しい知見だ」

 研究員達からどよめきの声が上がった。

「後は戦争で、相手の兵隊を攻撃とか・・・爆弾を積んで自爆するとか」

 自爆という言葉を聞いた瞬間、

「いやぁぁぁぁ、わたしのかわいい一つ目ちゃんを自爆なんてさせないわ」

 モモエルが武茶士から庇うようにテーブルの上の一つ目コウモリを抱え込む。

「貴様、なんていうこと言うんだ」

「モモエル様が一つ目ちゃんをどれだけ愛しているのか知らないのか」

「それを自爆とか、何という人でなしだ」

 研究員が一斉に武茶士を取り囲み、くってかかる。

「いや、だから俺の元いた世界の話で・・・」

「ほれ貴様ら、いい加減にせんか」

 マオが翼を広げ、武茶士ごと取り囲んでいた研究員たちを包み込む。

「うおっ」

「なんだこれっ!」

「何も見えん」

 突然、闇の翼に包み込まれた研究員達が慌ててその場を離れた。

「貴様達、こやつの話を聞け」

「そうですよ、俺は別にその一つ目ちゃんを自爆させたいわけじゃなくて、俺の元いた世界ではそういう使われ方もしていたと言っただけですよ」

「ホント?わたしの一つ目ちゃんを自爆させたりしない?」

 疑わしそうに見上げてくるモモエル。

「しません」

「ホントに?」

「ホントです」

 それでようやくモモエルは落ち着きを取り戻した。

「なんかこの国、変ではないか?」

 唐突にマオが今まで疑問に思っていたことを口にする。

「この研究所にはあちこち、爆発した後を補修した後があるし。そのコウモリも軍事目的じゃろ。一見平和に見えるこの国じゃが、どこぞと戦争でもしておるのか?」

 マオの言葉に場が静まる。

「そうね、あなたたちはこの国に来たばかりで日が浅いから知らないのも仕方ないわ。この国が置かれている現状を説明しましょう」

 モモエルがケットシー王国が置かれている現状を武茶士とマオに語って聞かせた。

 その話を聞いて、武茶士はなぜ勇者としてこの国に転生することになったのか理由を理解したのだった。

 猫神は子猫を助けるために自分の命を犠牲にした武茶士に、この国の未来を託したのだと言うことを。

近況報告です。

ポメラは買い直しました、新機種が出たばかりで今まで使っていたタイプが型落ちで安くなっていたのでそちらを購入。

新機種は新しい機能がイマイチの割にた高くなっていたので食指が動きませんでした。

そしてポメラの後を追うようにエアコンが壊れました。

古すぎて修理は無理、買い替えても来るのは来月だと言われました。

8月、乗り切れるか俺_| ̄|○

次の話のサブタイトルは「ミケラの日」です。


                          (Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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