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魔王襲来 その37

「とうっ」

 マオは屋根から飛び降りると同時に翼を広げる。

 ロープをすり抜けつつ、小妖精達に近寄るルートを探る。

 マオは小柄で翼はロープの影響を受けないのでロープの間を縫って飛ぶのは問題ないのだが、それでも簡単には小妖精達のいる待機用の椅子にはたどり着けなかったのだ。

「中々いやらしいロープの張り方をしておるな、この短時間でたいしたもんじゃ」

 ロープはどの方向から行っても待機用の椅子に近寄るにしたってマオでもすり抜けられないように張られていたのだ。

「チャトーミの言ったとおり、頭の回転は速いようじゃ」

 マオは一旦、上空に戻る。

 諦めたわけではない、通り抜けられる場所を探す為に戻ったのだ。

 侵入経路を求めて広場の上空を大きく旋回する。

 住人達やチャトーラは空中を飛び回るマオを見上げている事しか出来ないでいた。

「なんか変じゃねっ?」

 あまりにも人目を引きすぎるマオの行動に疑問を抱いたのだ。

「ちょっと待て」

 チャトーラは周囲を見回した。

「やっぱりな」

 こういうことには後先考えないで動くチャトーミの姿が見えない。 

「旦那、チャトーミがどこかに隠れているかもしれませんぜ。周りに気をつけて下さい」

 チャトーラの言葉に虎次郎は頷き、マオを警戒しつつ周囲にも目を配る。

「イヤッホ~~~ッ」

 その言葉が聞こえていたか、かけ声と供にチャトーミが屋根の上から勢いよく飛び出して来てロープの上に着地するとそのままロープの上を歩く。

「あぶねだろ、チャトーミ無茶するな」

 チャトーラはチャトーミが落ちてしまわないかと心配して怒鳴った。

「平気、平気」

 チャトーミはチャトーラの心配などまるで気にもせずにロープの上を歩く。

「あらよっと」

 ロープに掴りチャトーミは体操選手のように反動をつけ別のロープに飛び移った。

「おおっ」

 下から見ていた住人達からどよめきが上がり、それがやがて拍手と声援に変わる。

「チャトーミかっこいい」

「もっとやって見せてチャトーミ」

「頑張れチャトーミ」

 その声援にロープにぶら下がったままチャトーミは手を振る。

 それから幾つかのロープを飛び移り、小妖精達のいる椅子の上を目指す。

「ここいら辺かな」

 小妖精達の頭上近くまで来たチャトーミは背中に背負った荷物から畳んだ布を出して広げた。

 広げた布の大きさは小さめのテーブルクロスぐらいだ。

「しまった」

 その布を見た瞬間にチャトーミが何しに来たか理解したのだ。

 チャトーミは広げた布をロープとロープの間にかけた。

 その下に、ミケラが影移動に使えるサイズの影が生まれる。

「影が出来たじゃん、姫さん来るじゃん」

 シルゥが影の方に移動しようとする。

 上を見上げていたミミはチャトーミと目が合う。

 目が合った瞬間、チャトーミが少しだけ首を振る。

 それだけでミミには十分だった。

「まった、それは引っかけだ」

 ミミの目には影に向かって動き出している、チャトーラと虎次郎の姿が映っていた。

「本命はこっち」

 ミミは真上を見た。

 上からマオが突っ込んできて、小妖精達の真上で翼を目一杯広げて止まる。

 闇の翼によって作られた影が小妖精達を包み込んだ。

 中かミケラが現れ、小妖精達をむんずと掴むと再び影の中に潜り込むと広場の端に出来ていた影の中から飛び出す。

 そこへマオが大急ぎで駆けつけると、ミケラを抱えて櫓の上まで飛ぶ。

「はい、時間終了。女の子チームの完勝で終わりました」

 一斉に沸き上がる歓声。

「ミケラ様こっち向いて」

「姫様かわいい」

「ミケラ様おめでとう」

 ミケラは歓声に応えるように手を振る。

「ひ、ひめさん、つ、潰れる」

「い、息がく、苦しい・・・じゃん」

「よ、よろ・・・・・・し・・・」

 ミケラの手には小妖精達が握られたままだったのだ。


(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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