表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/592

魔王襲来 その35

「どうよ、祭りらしくなっただろ」

「チャトーラの言ったとおりに、ロープ張って提灯吊したら気分盛り上がるな」

「ホント、何か足りないと思ってたのよね」

 チャトーラと街の住人達が嬉しそうに吊された提灯やカラフルな布を見上げた。

 チャトーラは空からマオが来た時の対策として提案したのだが、街の住人達に喜んで貰えてそれはそれで嬉しかった。

「後は景気のいい音楽とか欲しいよな・・・そうだ、あのマイクって奴で音楽流せないかモモエルに聞いてみるか」

「おっ、それいいね」

「頼んだよチャトーラ」

「おう、任せときな」

 安請け合いをしてチャトーラはモモエルのところまで走る。

「モモエル、頼みがあるんだけどよ。そのマイクって奴であそこから音楽流せないか?」

 チャトーラはモモエルに掛け合う。

「出来なくはないですけど、ですけど・・・・・・」

 あまり気乗りしないようだった。

 ミケラ絡みなら「喜んで」と即答しただろうが、やはり秘密の研究品を持ち出した後ろめたさが返事を躊躇させる。

「そんな事言わないでやっておやりなさい、モモエル」

 その声を聞いた瞬間、モモエルの動きが固まった。

「あらどうしたのかしら、おほほほ」

 声の主は、先程武茶志が道を尋ねた老婦人だ。

「誰だ、あのばあさん?」

 チャトーラは不思議そうに突然現れた老婦人を見た。

「バカ、あの方はこの国のお妃様だ」

 モモエルの部下の一人が耳打ちする。

「お妃様って・・・姫様の母ちゃんか!」

 チャトーラは素っ頓狂な声を上げ、耳打ちした部下は頭を抱えた。

「おまえな」

 と言いかけたのを制したのはお妃様だった。

「いいのよ、ケットシーは身分なんて気にしないのが本来の生き方なんだから。わたしもお妃なんて身分、捨てられるモノなら捨ててしまいたいわ」

 とニコニコ笑いながらとんでもない事を口にする。

 それを聞いてチャトーラは、

「間違いなく姫様の母ちゃんだ」

 と確信した。

「そうもいかないところが辛いところよね」

 お妃様は困ったように腕組みをする。

「あら、お妃様こんにちは」

「今日もお忍びですか」

「お妃様、お身体の具合は・・・良さそうですわね」

 横を通り過ぎる住人達がお妃様に気軽に挨拶しながら次々通り過ぎていく。

「はい、こんにちは」

「うふふふ、ここに居るのは内緒ね」

「ありがと、ホント歳は取りたくはないわね」

 お妃様も気軽に返事を返す。

「お、お、お妃様、ご、ご機嫌麗しゅう・・・ご、ご、ございます」

 フリーズしていたモモエルがやっと動き出し、ギクシャクしながらお妃様に挨拶した。

「あらあら、なにかしら?そのしゃべり方は・・・何かやましい事があるのかしら?」

 お妃様は悪戯っぽく笑う。

「いえいえ、そ、そんな、やましい事など何も・・・・・・」

 モモエルはお妃様から目を逸らして否定をする。

「そうよね、重要機密の魔法投影機を持ち出してミケラの鬼ごっこの様子を映し出して、街の方々に見せるなんてしていないわよね」

 バレバレであった。

 モモエルは唇を噛み締めしばらく固まっていたが、

「すみません、すみません。わたしはどんな罰でも受けますから、部下達は・・・部下達はお許し下さい」

 モモエルはペコペコとお妃様に頭を下げ、部下達を庇う。


(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ