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1話「泉の妖精 その9」

「見ちゃダメ」

 慌ててチャトーミがミケラの目を塞ぐ。

「あちゃあ、どっちが悪者だか判らねぇな」

 チャトーラが呆れた声を出す。

「でも兄ちゃんあれ」

 チャトーミがドラゴンの方を指差した。

 チャトーラと虎次郎が指の差す方を見ると、ドラゴンの足の裏に何か刺さっているのが見えた。

 ドラゴンがうずくまったお陰で見えるようになったのだ。

「あれが痛くて苦しそうに吠えていた訳か」

「どうする兄ちゃん?」

 チャトーミがチャトーラの顔を見上げる。

「そうだな・・・」

 しばし腕組みして考え込むが、名案を思い付いたのかチャトーラの顔が明るく輝いた。

「旦那と姫様に頑張って貰うぜ」

 言われてミケラの顔がぱっと輝く。

「私、ドラゴンさんの為に頑張る」

 それから虎次郎の方を振り向き、

「虎次郎、一緒に頑張ろうね」

 うかれているミケラに手を握られ、

「お任せを」

 といつもの調子で呟くが、その表情はかなり張り切っているのが判る程にニヤけていた。

「で、兄ちゃんどうすんの?」

 と聞かれ、

「ちょっと待ってろ・・・有った、有った」

 チャトーラは鞄の中からロープを取りだす。

「旦那と姫様が、姫様のタレントでドラゴンの足下の影まで飛ぶ。そしたら姫様は旦那を置いて直ぐに戻ってきて下さいよ」

 言われてミケラは、

「判った」

 元気いっぱいに返事をする。

「旦那はこのロープの端を持って下さい、それで向こうに行ったらロープをドラゴンの足の裏のとげに結んで下さいよ。うずくまって動かない今がチャンスですから」

「承知」

 低いが力強い返事をする。

「そしたら俺とチャトーミがこのロープを持って、全力で走ってとげを抜きますから」

「兄ちゃん、頭いい」

「褒めるな、照れるぜ妹よ」

 と言いつつ胸を張るチャトーラであった。

「いい姫様、向こうへ行ったら虎次郎の旦那を置いて直ぐ帰ってくるんだよ。判った?危ないことしちゃダメだからね」

 チャトーラがミケラに言い含める。

「判った、虎次郎を置いて直ぐに帰ってくればいいだよね」

 ミケラは元気よく返事をする。

「旦那、姫様のこと頼んだぜ」

「いざとなれば、この身を盾にしてもお守りする」

「それじゃあ、行こう」

 ミケラが虎次郎の手を引いて近くの木の影まで歩く。

 ミケラのタレントは影移動、目で見える範囲で身体が隠れる大きさの影から影に移動出来るのだ。

 条件を満たせば自分以外も連れて行く事が出来る。

 幸い、近くには木の影が沢山あり、ドラゴンの下にもドラゴンの大きな影があった。

「行って来ます」

 ミケラがチャトーミに手を振る。

「行ってらっしゃい」

 チャトーミも手を振り返す。

「ふぬぬぬぬ・・・」

 ミケラが気合いを入れる。

 ミケラはまだ小さいので他人を連れて行く場合、少し気合いを入れないとならなかったのだ。

 しばらく気合いを入れていたミケラと虎次郎の身体が唐突に影の中に沈み、ドラゴンの下の影から飛び出す。

 ロープはミケラの消えた影の中に伸び、ドラゴンの影から飛び出し虎次郎の手に繋がっていた。

「虎次郎、お願いね」

 それだけ言うとミケラの身体が影の中にあっという間に消え、入った影から飛び出す。

 ミケラの身体が影から飛び出すと同時に、ロープは影からはじき出されて地面に現れる。

 虎次郎は素早くドラゴンの足の裏のとげにロープを結びつけると、チャトーラに合図を送った。

「合図だ、行くぞチャトーミ」

「あいよ兄ちゃん」

 ロープは既にチャトーラとチャトーミの身体に結びつけた有ったので、二人はありったけの勢いで走り出す。


著作権表記追加                       (Copyright2021-© 入沙界 南兎)


2024/09/24 一部修正



                   (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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