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魔王襲来 その34

 その頃、武茶志は途方に暮れていた。

「ここは一体何処だ?」

 この街に来てまだ日が浅く、その上に屋根に飛び上がって走り回った御陰で自分が何処にいるかさっぱり判らなくなってしまったのだ。

「こんな時、スマホがあれば助かるのに」

 生前はちょっと出かけるのにもスマホのマップを頼りにしていた身には、スマホのない世界はかなり厳しかったのだ。

「あっ、スマホがあってもこの世界にはGPSが無いからダメか」

 武茶志は苦笑する。

 どんなにスマホが便利でも、それを支えるインフラがなければ意味がない。

「うん?」

 屋根の下の通りを、三毛猫柄の猫耳と猫尻尾の品の良い感じの老婦人が通りかかるのを見つけた。

「済みません、ちょっといいですか」

 武茶志は屋根の上から声をかけた。

 老婦人はどこから声が聞こえたのか判らず、しばらくキョロキョロと周りを見回す。

「こっちです、屋根の上です」

 武茶志は手を振りながら更に声をかけると、老婦人はやっと気が付き上を向く。

「あなた、屋根の上で何やっておいでですの?」

 老婦人は不審の目で見る。

「ミケラ姫様の・・・あの、鬼ごっこに参加して・・・・・・います」

 ミケラの名が出た途端に婦人の顔が笑顔になり、

「ああ、あなた、ミケラ・・・様の鬼ごっこの参加者なのね、頑張ってね」

 ニコニコ笑いながら応援してくれた。

「ありがとうございます、それですみません、商業区画はどっちの方でしょうか?この街に来たばかりで、方向が判らなくて」

 武茶志はポリポリと頭を搔きながら道を尋ねた。

「あらあら、迷子なのね。商業区画は向こうよ」

 老婦人は商業区画の方向を指差して教えてくれた。

「ありがとう」

 武茶志は礼を言って勢いよく飛び出した。

「お待ちなさい、そちらは反対方向よ」

 と老婦人が声をかけた時には、既に武茶志の姿は何処にもなかった。

「仕方有りませんわね」

 老婦人は溜息をつくと、どこかに向かって合図を送る。

 その合図が終わると同時に、白と黒の影が武茶志を追っていった。

「あの方がミケラが拾ってきた勇者様のようね、うふふふ」

 老婦人は楽しそうに笑い、商業区画に向けて歩き始める。




 マオは櫓のある広場に忍び寄っていた。

 屋根の上に身を潜ませ、そっと下を確認する。

 いつの間にか、櫓から何本もロープが張り巡らされ、提灯や色とりどりの布が吊されているのが見えた。

 これでは迂闊に空中から突撃は出来ない、無理な突撃すればロープに引っかかってしまうだろう。

「やはりチャトーミの言ったとおり、空中対策をしてきておったな」

 マオは気が付かれる前に顔を引っ込めると、同じように屋根の上に身を潜めているチャトーミに合図を送った。


(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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