魔王襲来 その33
「それじゃ、あたい達は行くぞ」
「リー一人じゃかわいそうじゃん」
ミミとシルゥは櫓を目指して飛び去っていった。
見送るミケラ達。
「助けに行こう」
チャトーミが提案する。
「うん」
「当然じゃ、受けた恩は返さねば」
早速ミミ達の救出策戦を相談する。
「予が空から突撃するのはどうじゃ?幸い、向こうの飛行戦力のクロは失格になったので空からの防御は弱いはずじゃ」
マオの提案に、
「兄ちゃんがなんか仕掛けてくると思う。兄ちゃん、こういう事には抜け目ないから」
流石に一緒に育った双子の妹、チャトーラの抜け目のなさはよく知っていた。
「そうか、ならばもう一工夫必要じゃな」
「わたしが助けに行く」
ミケラが手を上げた。
「でも姫様、あれやると凄く疲れるんでしょ?」
「うん、でも一回だけなら大丈夫」
疲れるのは確かだが、さっきはチャトーミを連れて何度も影移動したので疲れ果ててしまっただけなのだ。
「よし、あの三人はミケラが助けるで決まりとする。では予達はミケラをサポートする側に回るぞ」
「お~っ!」
チャトーミとマオは盛り上がる。
「ところで武茶志の姿見てないけど、どこ行っちゃったんだろうね?」
「予も見かけなかったが、あやつはどこにおるのじゃろうな?」
マオも首を傾げた。
勇者アンテナを使えば直ぐに見つけられるのだが、鬼ごっこが楽しくてすっかり忘れていたのだった。
「でも良かった、あれやらなくて済みそうだから」
チャトーミはホッと溜息をつく。
「そうじゃの、あれは流石にえげつないからのう。あのちびっ子達はよくこんなことを思い付くもんじゃ」
「そうだよね、あたしが武茶志に抱きついて悲鳴を上げるなんて恥ずかしいよ」
チャトーミが人気のないところに武茶志を誘い出し、抱きついた挙げ句、悲鳴を上げて逃げ回るという作戦だった。
もし実行されていれば、生前、彼女いない歴=年齢の武茶志への精神的ダメージは計り知れない事になっていただろう。
「大丈夫じゃ、それは人としてやってはいけない事じゃ。もし実行される事があったら、予が全力で阻止しておる」
「そうだよね、やっちゃダメな奴だよね。やらなくて良かった」
魔王が人としてのあり方を説くというのもなんだかなであるが、こうして武茶志のトラウマに塩を擦り込むぞ作戦は回避されたのであった。
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