魔王襲来 その25
「姫さん、それと茶色いのこっち来て」
ミミがミケラとチャトーミを呼ぶ。
「茶色いのってあたしの事?」
チャトーミが聞くと、
「そうだよ、茶色いじゃない」
「茶色いのは認めるけど、茶虎柄だから。でも茶色いのだけじゃ兄ちゃんと区別つかないよ」
「それもそうだね・・・」
ミミは腕組みして考え、唐突に頭に閃く。
「じゃ、チャイロミでどうよ」
「え~っ、名前とあまり代わらないよね。せっかくならもっと違うのがいいな・・・そうだ、チャミとかどう?あたし、子供の頃はチャミと呼ばれてたんだよ」
チャトーミはえへへと笑う。
「チャミか、あたいの名前に似てる・・・いいか」
「イエイ、決まり」
チャトーミが飛び跳ねた。
「そこ、騒いでないでこっちに来るじゃん、作戦会議するじゃん」
シルゥが騒いでいるチャトーミとミミに釘を刺す。
「作戦会議?」
「作戦て何するの?」
ミケラとチャトーミがミミ達の元に集まる。
マオは先に来ていた。
「作戦とは何をするのじゃ?」
マオがミミ達を見上げる。
「取りあえず、茶色いのと棒振りは怖くない」
茶色いのとというのはチャトーラの事、棒振りとは虎次郎の事だ。
「そうじゃん、あの二人は強いけど地上を這いずるしか出来ないじゃん」
「四露死苦」
虎次郎もチャトーミも強いが本領を発揮出来るのは地上戦だ。
しかも虎次郎は武器を持っていないので攻撃法方も限られる。
「今回、一番やばいのは武茶志だ。あいつは運動神経も高いしジャンプで家くらい飛び越えてくる」
「飛べるあたい達の最大の敵じゃん」
「四露死苦!」
小妖精達は興奮する。
「確かにあやつの運動神経は侮れないな。今の予では、あやつに追い回されては逃げ切るのは難しいかもしれぬ」
マオも武茶志がやっかいな相手である事を認める。
以前のマオならば余裕で武茶志を撃退出来ただろうが、纏っていた闇を殆ど失った今のマオでは飛ぶのがやっとで撃退などする力は残っていない。
「ぼ~~~」
「ぽけ~~~っ」
ミケラとチャトーミは我関せずとばかりにボケ~っと聞いていた。
「そこの二人、もっと真面目に聞けよ」
ミミが怒るが、
「あたし、鬼ごっこで一度も捕まった事ないから」
「わたしも」
「気が合うね」
「うん」
ミケラとチャトーミは顔を見合わせてきゃっきゃっと笑う。
その二人を何笑ってるんだとみる小妖精達とマオ。
「凄い余裕じゃん、でも武茶志は強敵じゃん。油断すると簡単に捕まるじゃん」
シルゥの言葉に、ミケラとチャトーミが今までに本当に鬼ごっこで捕まった事が無い事を熱弁した。
説明を聞いたミミ達は、
「なんじゃそれは、あの女謀ったな」
あの女とはタマーリンの事だ。
「初めから姫さんの事を知っていて鬼ごっこをもちかけたじゃん」
「四露死苦(`´)」
ミミ達は顔を付き合わせて更に相談する。
「このまま姫さんに暴れられると、あたい達が目立たない」
「そうじゃん、姫さんはんはおとなしくして貰うじゃん」
「四露死苦」
更にこそこそと打ち合わせをして、
「姫さん、今回は姫さんはうちのチームの秘密兵器をやってもう」
「秘密兵器?」
ミケラは頭の上に沢山、?マークを付けてミミを見上げた。
「そう、重要な役割じゃん。だから出番が来るまでおとなしくしているじゃん」
「重要って大切って事だよね、わたし知ってる」
「凄い姫様、あたしより賢い」
脳天気に笑うミケラとチャトーミ。
「お前達、性格悪いじゃろ」
マオがズバリと本質を突いた。
「な、なんの話かな?」
「よ、よくわかんないじゃん」
「よ、四露死苦(..;)」
小妖精達はそれぞれとボケる。
「まあ良いわ、それで予は何をすれば良いのじゃ」
マオはそれ以上追求しないで話を進めた。
「あんたにはクロの相手をして貰うよ」
「神龍の?」
「そうじゃん、あたい達の敵じゃないけど能力が高いのは確かじゃん。先に潰すじゃん」
「そうだね、この前普通のドラゴンに変身してあたし達を街まで運んでくれたから、飛ぼうと思えばきっと飛べるよね」
チャトーミも同意する。
「そうなの?クロ飛べるの?」
ミケラがその話を聞いてワクワクして目がキラキラと輝き始める。
「止めろ、その目は止めろ」
小妖精達が一斉に物陰に逃げた。
「なんじゃ?」
「なんであの子達、姫様の目がキラキラすると逃げるんだろうね?」
「うん、変だね」
ワケが判らず、ミケラとチャトーミとマオは顔を見合わせた。
「まっ、とにかくだ。他にも作戦はあるから伝授するぞ」
「伝授するじゃん」
「四露死苦」
ミケラの目のキラキラが収まったのを確認して、何食わぬ顔で小妖精達は戻ってきた。
「慌てて逃げていった奴がなんかエラそうじゃな」
すかさずマオは突っ込みを入れた。
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