1話「泉の妖精 その8」
「虎次郎、来て」
ミケラに呼ばれ、落ち込んでいた虎次郎がすっ飛んでくる。
「ここに」
ミケラの前に傅く。
「ドラゴンさんがどうして苦しそか判らない?」
ミケラの泣きそうな顔を見て、虎次郎は何とかしようと考えるが切る以外に思い付かず、しばしオロオロした挙げ句にチャトーラの方を見た。
「お、俺かよ」
振られたチャトーラが慌てて周りを見たが、泣きそうなミケラの顔を見て諦めて溜息をつく。
「俺に振られても困るんだけどな、姫様の為なら仕方ないか」
と言ってみたものの、何か策があるわけでも無かった。
「あたい達が聞いてきてやるよ」
「あたい達、あのドラゴンとは知り合いじゃん」
「四露死苦w」
妖精達の意外な提案に驚くが、
「いいのか、助かるぜ」
妖精達の申し出にチャトーラはホッとする。
「姫様、妖精達が聞いてきてくれるってよ」
チャトーラは妖精達の申し出をそのままミケラに伝えた。
「いいの?」
「いいさ、あんた達には泉を取り返して貰って恩もあるしさ」
「そうじゃん、あたいらは義理堅いんじゃん」
「四露死苦(^^)v」
泣きそうだったミケラの顔がぱっと明るくなった。
「お願いね」
キラキラする目で妖精達を見上げた。
「やめろ、その目であたい達を見るな」
「逃げるじゃん、逃げるじゃん」
「四露死苦~~~~」
妖精達は慌てて逃げ出すと、ドラゴンに向かって飛んだ。
「お~い、そこのドラゴン」
その声を聞いた瞬間、苦しそうな雄叫びを上げていたドラゴンが一瞬ギクッとしてそのまま固まってしまう。
「あたい達を無視とか、いいご身分になったじゃん」
「四露死苦」
ドラゴンが壊れた機械人形のようにギクシャクしながら振り向くと作り笑いを浮かべ、
「そ、そんな事はありませんよ。こ、この僕が泉の妖精さんのことを、む・・・無視する・・・ん・・・」
最後の方は消えそうにか細い声になる。
「ああん、最後の方なんて言った。聞こえなかったよな?」
シルゥ達に確認するミミ。
「聞こえなかったじゃん、あたい達を馬鹿にしてるじゃん」
「四露死苦」
ドラゴンの顔が真っ青になる。
「すみません、すみません」
「謝って済むなら、警備兵要らないじゃん」
妖精達に絡まれてドラゴンは更に縮こまってしまう。
その姿は街中で不良に絡まれる中年サラリーマンのようだった。
「ぼ、僕にな、何か御用ですか?」
「ああん、言わなきゃわかんねぇのか!」
ミミに怒鳴られてドラゴンは胃のあたりを押さえて、
「アタタタ胃が・・・・・・」
と言いながら空中でうずくまってしまう。
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2024/09/24 一部修正
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