魔王襲来 その19
広場に住人達が続々と集まり、出店も出始めていた。
「そろそろですわね」
タマーリンは各部署の責任者の顔を見る。
衛士隊長、工作隊の隊長、魔法道具隊の主任、それぞれが準備完了の合図を返す。
最後に櫓の下のモモエルを見て互いに頷き合う。
「みなさん、始めるますのでこちらの台の上にお上がり下さい」
タマーリンが参加者に声を掛けた。
広場の真ん中に舞台が設置されており、タマーリンは今その舞台の上にいるのだ。
参加メンバーがそれぞれ舞台の上に上がる。
「男の子組と女の子組に分かれて・・・はい、いいですわよ」
舞台の上で男の子組と女の子組に分かれ、その間にタマーリンが立つ。
タマーリンは細い棒を手にしてモモエルに合図を送る。
モモエルが魔法師の一団に合図を送ると一つ目コウモリが三匹、タマーリンのところまで飛んできて、魔法投影機三台それぞれにタマーリンの姿が映し出される。
「あ~あ~あ~」
タマーリンが手にした棒に向かって声を出す。
「あ~あ~あ~」
その声が魔法投影機から響く。
「おおっ」
集まっていた住人達からどよめきが上がる。
「いま、あの箱の中のタマーリン様が喋ったぞ」
「聞いた聞いた、本物のタマーリン様が話しているみたいだったな」
住人達は口々に魔法投影機を誉め、そしてこれから始まるミケラ達の鬼ごっこに対する期待が高まる。
「画面から直接音が出ていた。高級テレビ並の事が出来るのか、魔法すげぇ」
武茶志が驚きの声を上げる。
「あれ欲しかったんだよな」
生前は仕事が忙しがった、忙しかった分、それなりに収入が有って無理すれば買えなくも無かったが、忙しくて買ってもテレビを見る時間が無かったのだ。
「ねぇねぇ、その棒に喋ると向こうから声が出るの?」
チャトーミが興味津々でタマーリンが手にしている棒を見た。
「そうよ、そうね・・・それじゃあこれを使って皆さんに挨拶をしてみます?」
唐突の話に男性陣は顔を見合わせたが、
「はいはい、やってみたい」
「わたしも、わたしも」
チャトーミとミケラは大騒ぎで手を上げ、
「ふっ、仕方ないの。予の魅力を見せるのもやぶさかではないぞ」
マオもやる気満々だ。
「あたい達の魅力を更に広めるチャンスだな」
「やってやるじゃん」
「四露死苦」
小妖精達も熱く闘志を燃やしていた。
「武茶志の前の世界じゃ、こんなのは無かったの?」
チャトーミに聞かれて、
「有りましたよ、でも俺、スピーチは苦手で逃げてましたから」
生前、会社でいかにプレゼンを他人に押し付けて、逃げるかばかり考えていた時期が有った事を思い出す。
あまり逃げ回るので、最後には諦められてプレゼンの話が来なくなりホッとしたモノだ。
「社会人としてどうかと自分でも思うけどね」
武茶志は苦笑する。
次回と次々回はいつもより文字数う多めになります。
流れ的に一気に読んで欲しいのであえて切りません。
よろしくお願いします。
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