魔王襲来 その17
「追う側が逃げる側の身体の一部にタッチしたら捕まった事にします」
「順当なところだな」
みなが頷く。
「それと変なところには触らないように、投影機に映像が映されてますし、街の方が応援で見てますから変な事をしたら後で色々と大変な事になりますからね。判りましたね、武茶志」
「また、俺ですか?」
と言い返したかったが、言い返しても勝てる気がしないので、
「はい、判りました」
と素直に返事を返す。
タマーリンはあからさまに「な~んだつまんない」と言う表情をする。
その顔を見てみ「言い返さなくて良かった」と心の中でホッとする武茶志だった。
しかし、そのやりとりの影で怪しげな笑みを浮かべる者達がいた。
小妖精達だ。
「これは勝ったな」
「勝ちじゃん」
「四露死苦」
早速、集まって悪巧みを相談し始める。
「鬼側の方は捕まえたらそこまで連れてきて下さい」
タマーリンが櫓の近くの長椅子を指差す。
捕まったらそこで座って待つ事になるのだろう。
「逃げる側が救出する場合は、そこまで来てタッチして下さいね」
流石にミケラの影移動で救出出来ないように、長椅子は影移動に使えるような影から離れた場所に置かれていた。
「あそこの場所なら姫様の影移動も使えないし、見通しもいいから解放に来たら逆に捕まる危険もあるな。位置的には公平か」
チャトーラは冷静に分析する。
「そうそう、言うのを忘れてましたが小妖精は一人でも捕まったら全員捕まった事になりますから」
「なんじゃそれは」
「あたい達、三人で一人扱いじゃん」
「四露死苦」
小妖精達が猛抗議するが、
「あらぁ、何か文句有りますの?」
タマーリンがひと睨みすると、
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「もう二度と文句は言わないじゃん」
「よ、よろしくぅぅぅ」
一瞬で震え上がり、空中土下座してひたすら謝る。
「ほぉ~ほっほっほっほっほっ」
しばし、タマーリンの高笑いが広場に響き渡った。
「それからクロ」
「僕ですか?」
「ミケラ様に5メート以上接近禁止」
唐突の申し渡しに驚くクロ。
「な、何故です、僕が何をしたというのですか?」
「これからしようとしているんでしょ?」
タマーリンの指摘にクロはギクッとしたが、
「な、何をおっしゃるのでしょう。品行方正の僕が何をするというのですか?」
クロはキリッとした顔をする。
「鬼ごっこのどさくさに紛れてミケラ様に抱きつくつもりでしょ?」
図星を指されて更にクロはギクッとする。
「な、何をおっしゃるんですか?ぼ、僕の事をなんだと思っているんですか?」
「姫様の周りを徘徊する変質者」
「幼女趣味の変態」
「お姫様を追い回すストーカー」
「ロリコンの変態トカゲ」
容赦なかった。
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