魔王襲来 その16
「あんた、なにやらかしたんだ?」
と詰め寄るチャトーラ。
「や、やらかしたなんて、な、なんのお、お、お話かしら?」
目を逸らし冷や汗を流しまくるモモエル。
「モモエル、責任はわたくしが取りますわよ」
そこへタマーリンが助け船を出す。
「いいのタマーリン?王様はともかく、お妃様は手強いわよ」
実はお妃様はタマーリンの祖父の末の妹で、タマーリンにとってミケラは叔母に当たる事になるのだ。
それとは関係なくタマーリンは心の底で、ミケラを一生仕える相手として定めていたのだが。
「判ってます、でも貴方を誘ったのはわたくしですから、誘っておいて後は知らないと逃げるなどと言う恥ずかしい真似はわたくしには出来ませんわ」
お妃様は若い頃はお忍びでよく実家に戻っていた。
ミケラが城を抜け出して散歩して回るのもお妃様の影響だろう。
そしてお妃様は小さい頃のタマーリンを知っていて、タマーリンが苦手とする数少ない存在で有った。
「本当に大丈夫?貴方お妃様は超苦手でしょ?」
「ほ~ぉほっほっほっ、わたくしに苦手なモノなどありませんわ」
高笑いするタマーリン、しかし、顔は完全に引きつっていた。
「あぁ、判った。あれ、見せちゃまずい奴なんだろ」
チャトーラは、タマーリンとモモエルの様子から大方の予想を付けた。
「ミケラ様のお姿を写せるならお小言の一つや二つ」
「どんとこいですわ」
開き直って二人でハイタッチするタマーリンとモモエル。
その横で頭を抱えるサビエラ。
「なぁ、本当にこの国は大丈夫なんじゃろうな?」
マオが真顔で聞いてきたが、武茶志は返事をせず笑って誤魔化すしかなかった。
「皆さん、申し訳ありませんがもう一度集まって下さい」
タマーリンがもう一度みなを呼び集める。
「なんだよ、まだなんか用事があんのかよ」
「なんなんだろうね、兄ちゃん?」
チャトーラたちは文句を言いながらタマーリンの周りに集まる。
「はいはい、文句は後でね。第一、あなた達ルールを聞いていないでしょ」
言われてみて聞いていないのに気が付く。
「あっ、そうだったな」
「そうだね、遊びにだってルールは必要だよね」
魔法投影機に目を奪われてルールを聞き忘れていたのだ。
それはタマーリンも同じで、説明をほっぽといて魔法投影機に見入っていたのだが。
「ルールを説明しますわ、まず範囲は商業区画だけで行います。住宅街やお城の中は当然ダメですよ」
商業区画だけでも裏通りまで含めればそこそこの広さがあるが、子供達が鬼ごっこやかくれんぼをして遊んでいるので広さ的に問題は無い。
「姫様が参加するなら妥当なところだな」
あまり広いと追う方も大変だが、逃げる方も大変になってしまうのだ。
「追いかける鬼は男の子チーム、女の子チ-ムが逃げる側で・・・その方が燃えるでしょ武茶志」
「なんで俺に振るんですか?」
と武茶志は聞いたが、
「言っていいの?この場で言っていいのかしら?」
タマーリンが怪しい笑みを浮かべたので、
「いいです」
あっさりと引き下がる。
ここで突っ張ってもろくな事にならないのは身に染みていた。
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