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魔王襲来 その11

「見たか、今の」

「武茶志、二回斬りかかったぞ」

「俺だったら斬りかかった瞬間に反対に斬られてるな」

「俺もだ、それを二回も斬りかかって逃げられるなんて」

「あんな芸当出来るのは、衛士の中でもそんなにおらんぞ」

「やっぱ勇者は伊達じゃないな」

「勇者すげぇな」

 見ていた衛士達は武茶志に喝采を上げて褒め称えた。


「大丈夫か?」

 虎次郎が倒れて動かない武茶志に声を掛けた。

「は、はい大丈夫です」

 気は失っていないようだ。

 武茶志は腹を押さえながらようやっと立ち上がる。

「後ろに距離を取ったからと油断しすぎだ、不意の攻撃の備えて防御も怠るな」

 的確なアドバイスに武茶志は頷く。

 口数は多くなく、ミケラの側にいると変人的行動も目立つが、剣に関しては的確にアドバイスしてくれる。

 武茶志も手ほどきを受けて虎次郎の教え上手には驚いたモノだった。




「それではタマーリン様、櫓はそのように」

 工兵隊の隊長との打ち合わせで街の広場の真ん中に櫓を組み上げる事に関しての打ち合わせは終わり、隊長は早速工事を始める為に退席した。

「タマーリン様、モモエル様をお連れしました」

 サビエラが長身の黒いローブを着た美人を連れて現れた。

「用事って何かしらタマーリン」

 タマーリンは魔法師の総括、この国の魔法関連を束ねる重鎮なのだが、殆ど王宮に居着かないタマーリンに代わって魔術師を束ねているのがモモエルだった。

「貴方のところで魔法投影具の開発をしていたでしょ、貸して貰えないかしら」

 モモエルは魔法道具の開発部門の長もしていた。

 魔法投影具も最近開発されたばかりのもである。

「ちょっと待って、魔法投影具は開発されたばかりの最高機密よ。貸してと言われて、はいそうですかと言えるわけないでしょ」

 モモエルの言う事はもっともだ。

「うふふふ」

 タマーリンが笑う。

「ミケラ様の為に使うと言ったら、貴方に断れるかしら」

「お話を伺いしましょう」

 一瞬の迷いもなく話に食いついてきた。

「はぁぁ、まったくこの二人は」

 サビエラはめまいを感じてその場で頭を抱えた。

 タマーリンとモモエルはこの国の魔術師関連の双璧であったが、ミケラ信者の双璧でもあったのだ。

「そう、ミケラ様が街の中で鬼ごっこを。そのお姿を皆様にご覧頂きたいというわけですね」

 モモエルはタマーリンの話を真剣に聞いていた、サビエラは悪い予感しかなかった。

 その予感は大当たりした。

 モモエルがメモに走り書きをすると、

「サビエラ、このメモを研究室の誰でもいいから渡して頂戴」

 とサビエラに押し付けてくる。

 ケットシーは猫の妖精である、故に性質は猫に似ている。

 ケットシー王国にも貴族などの階級は存在するが、猫故に階級とかはあまり気にせず、のびのびと自己の生活を満喫している。

 だが、一旦下僕認定すると、死ぬまで下僕としてこき使う特性も持っていた。

 サビエラはタマーリンとモモエルに完全に下僕認定されていたのだ。

「判りました、判りました。直ぐに行ってきます」

 サビエラは大きく溜息をついた後、メモを受け取ると全力疾走で城に戻った。

 下僕認定されるというのは、裏を返せばそれだけ信頼されているという事なのだ。

 猫は信頼していない相手を下僕扱いしないのと同じ事。

 それが判っているのでサビエラも大人しく従っていたし、その信頼に応えようと思っていた。


                         (Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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