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魔王襲来 その9

「いえいえ、同じ事も面白くないですわ。それに、街の方にも楽しんで貰う事をしたいと思いますの」

「街の中でやれる事ですか?面白そうですね」

 武茶志がタマーリンの言葉に引かれて乗ってきた。

 虎次郎はミケラとマオが仲良くしているのを見て、耳を三角にして尻尾をブンブン振り回していた。

「そうですわ、それには少し準備が必要ですの」

 と言ってタマーリンは遠巻きに見ていて様子を伺っている群衆を見回す。

「サビエラ、こちらにおいでなさい」

 命令口調でタマーリンが部下の名前を呼ぶ。

 群衆の端の目立たない場所で様子を伺っていたサビエラは、突然、自分の名前を呼ばれて驚く。

「うそ、目立たないようにしてたのに、見てるのばれてた?」

 一瞬、硬直し逃げようかと考えたが、

「行かないと後でひどいことになるし・・・」

 と思い直し、

「はい、タマーリン様、只今参ります」

 そう叫ぶと群衆を押しのけて、タマーリンの側まで全力で走った。

「はぁはぁはぁ、た、タマーリン様、サビエラ参りました」

 サビエラは苦しそうに息をしながらタマーリンの前に立つ。 

「ご苦労様、それでは城に行って衛士隊と工作部隊、それとモモエルを呼んで来て下さるかしら」

 言葉は丁寧だったが逆らうのは絶対に許さないという力のこもった言葉に、サビエラはヤレヤレと小さく溜息をつくと、

「かしこまりました、直ちに呼んで参ります」

 と返事をして城へ向かって全力疾走で走る。

「さて、来るまでにこちらも準備をしておきましょう」

 タマーリンは遠巻きに見ている群衆の方へ歩くと、

「フロウト」

 浮遊の魔法で宙に浮く。

「皆様、少々お願いがございますの」

 良く通る声で叫んだ。

「タマーリン様、お願いとはなんでしょうか?」

 群衆の中から街の長を務める男が進み出て、タマーリンに恐る恐る尋ねた。

「今からミケラ様達が街の中で鬼ごっこをしますので、皆さん邪魔をしないように。邪魔しない限りなら、観戦も出店も許可しますわよ」

 唐突な宣言に戸惑う群衆。

 しかし、タマーリンに文句を言う者はいなかった。

 主立った者がまとまり、ヒソヒソと話し合う。

「いきなり鬼ごっことか、どうするよ」

「毎度、タマーリン様は武茶ぶりだよな」

「でも逆らうと後が怖いし」

「それにミケラ様がするんだろ?」

「ミケラ様か、じゃあ仕方ないか」

 話はまとまったようだ。

 年老いた王に生まれ、生まれて直ぐにタマンサに預けられて街中で育ったミケラは、街ではアイドル的存在だったのである。

「はい、ミケラ様の為なら喜んで協力させて貰います」

「みんな行くぞぉ」

「お~~~~っ」

 群衆は一斉に街へ散っていった。

(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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