ケットシー物語 クロ、故郷に帰る 53
「力強いぞ、二人なんてこうだ」
キャメルが二人を優しく掴み上げる。
「怖いドラゴンは、二人を食べちゃうぞ、ガオォ」
口を開けて二人を食べるフリをする。
それにミケラもサクラーノも、
「きゃ~~」
「たべられちゃう~~」
と笑いながら叫ぶ。
その声を聞きつけて、クロッポが慌ててやって来た。
「よせ、その方・・・神龍様のお客様にそんな事をしちゃダメだ」
二人を食べるフリをしていたキャメルを止めたのだ。
「冗談ですよ、冗談。二人だってこんなに喜んでるのに」
キャメルに掴まれているミケラもサクラーノも、怯えた様子は一切なかった。
「遊んでいただけだよ」
「そうだよ、遊んでいただけ」
楽しく遊んでいたのに、急に割り込んできたクロッポに二人ともおかんむりだった。
「あいや・・・すまん」
それだけ言うとクロッポはすごすごと戻っていく。
「変なの?」
「クロッポさん?」
ミケラ達とキャメルはなんだったんだろうと、顔を見合わせる。
そんなクロッポを見つめる目があった。
「何か気がついていますわね」
タマーリンが鋭い眼差しでクロッポの背中を見送る。
クロッポの言動が怪しすぎる、一瞬だけ言った「その方」という言葉も気になるところだ。
「ねえねえ、あれ見たい」
ミケラが網の扱いの練習をしているライリュを指さす。
「あれ見るの?面白くないよ」
キャメルは自分が苦労した事を思い出して止める。
「やだ、見たい見たい見たい」
普段は素直で聞き分けのいい子のミケラだけれど、一旦スイッチが入ってしまうとテコでも動かなくなってしまう。
そのスイッチが入ったようだ。
自分の手の中で駄々をこね始めたミケラに困り果て、
「判ったよ」
二人を地面に降ろしたのだった。
「いこ」
珍しくミケラがサクラーノの手を引っ張って、ライリュのところまでトコトコと走っていく。
それだけ見たかったのだろう。
ミケラが動くと、護衛役の虎次郎、白妙、黒妙、レッドベルが付いて動く。
「ひっめさま」
チャトーミがミケラの横にくっつき、
「フラフラすんなよ」
いつまで経っても子供っぽさが抜けない妹を心配して、チャトーラが仕方ないとばかりに付いてくる。
「面白そうなのじゃ」
その頭の上をマオットが飛ぶ。
ちょっとした集団なになってしまった。
「ドラゴンてホント不器用よね」
「そうじゃん、身体ばかり大きくて不器用じゃん」
「四露死苦」
いつの間にか小妖精達もミケラの頭の上に乗っかっていた。
「なんだおめえらいたのか?」
今更のように驚くチャトーラ。
「ポンコツの駄猫に、姫さんは任せられないからね」
ミミが鼻で笑った。
「誰が駄猫だ、誰が」
ミミに挑発にあっさりと乗っかるチャトーラ。
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