ケットシー物語 クロ、故郷に帰る 52
「うわぁ、破けた!」
あっさりと網が破れて、驚くライリュ。
「どうだ、あっさりと破れただろ?」
クロッポがにやっと笑う。
「う、うん」
自分の手が掴んでいる破れた網と、クロッポを交互に見るライリュ。
「俺たちドラゴンは力が強い、網なんて簡単に引きちぎれる。それは判ったな?」
「う、うん、判った・・・」
コクコクと頷く。
「網を破かないで済む力加減を、これから練習するぞ」
クロッポが説明無しに網を引っ張らせた理由を教える。
「今度はこれを使え」
クロッポが手にしていた網をライリュに渡す。
「さっきみたいに両手で広げて、今度はゆっくりゆっくりと両側に広げていってみろ」
クロッポに言われたように、ライリュは渡された網を両手でゆっくりと広げ始めた。
「ゆっくり・・・ゆっくり」
ライリュはゆっくり、ゆっくりと網を両側に引っ張った。
集中しすぎて、寄り目になる。
ブチン
音を立てて網の一部が切れた。
「ひゃぁぁぁ」
その音に驚き、ライリュは変な声を出してしまう。
「落ち着け、落ち着け。まだロープが一本切れただけだ」
宥めるクロッポ。
「で、でも」
焦ったライリュはそれどころではない。
「一本で手を止められたのは凄いぞ、俺なんて二十張目でやっと出来たからな。俺より筋がいいぞ」
誉めるクロッポ。
「クロッポさんでも・・・ですか・・・」
誉められるのは嬉しいが、クロッポの意外な話を聞いてどう表情すればいいか困るライリュ。
「俺たち黒龍は赤龍と並んで、ドラゴンの中じゃ気性の激しさは一・二を争うからな。こんなちまちました事は苦手なんだよ」
気性が激しいと聞いて、ますます信じられないという表情をするライリュ。
「クロッポさんが気性が激しいなんてさ、信じられないさ」
ライリュの言葉に、苦笑いするクロッポ。
「色々とあったのさ」
クロッポは遠い目をする。
「それより練習だ、練習。網に入れる力加減を覚えないと、他の仕事を教えようがないからな」
練習が再開される。
「何してるの?」
ミケラがキャメルに聞く。
「網を扱えるようにする練習だよ」
キャメルが説明をする。
「練習?どうして?」
ミケラは、どうして練習が必要なのか判らなかったのだ。
「おいら達の手、こんなに大きいだろ?」
キャメルが手を広げてみせる。
「大きい」
「凄く大きい」
ミケラとサクラーノが、広げたキャメルの手をみて嬉しそうに手を上げる。
「それで力も強いから」
「力強いの?」
ミケラとサクラーノが顔を見合わせる。
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