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ケットシー物語 クロ、故郷に帰る 47

「おっといけね」

 ミケラ達と話している間に、魚が急に方向転換して仕掛けた網とは別の方へと進んでいるではないか。


 慌ててブレスを吐いて、魚の向きを変えようとするがなかなかうまくいかない。


「落ち着けおいら、落ち着け」

 キャメルは空中に停止し、深呼吸を始めた。


「ドラゴンでも、深呼吸して落ち着かせるんだね姉ちゃん」

 黒妙が、意外なものを見たという顔で白妙の方を見る。


「やっぱりケットシーもドラゴンも、落ち着かせるためには深呼吸が一番て言う事じゃないかしら」

 白妙もウンウンと頷く。


「大きさが違うだけで、中身はそんなに違わないのかな」

 黒妙は新しい発見に、自分なりに納得するのだった。


 深呼吸をして落ち着きを取り戻したキャメルは、しっかりと狙ってブレスを吐く。


 ストーンブレスが水面を撃ち、魚の群れの進行方向に壁となる。


 慌てて向きを変える先頭の魚。


 その後を群れも追う。


 何度かブレスを吐き、やっと群れの方向が仕掛けた網の方に変わる。


「ふ~、やっと向きを変えられた」

 ホッとし、額の汗を拭うキャメル。


 その一部始終を見ていたミケラとサクラーノは、

「凄い、凄い」

 とキャメルに拍手する。


「へへへ、この仕事も長くやってるからね」

 嬉しそうに笑いながらも、今度は油断しないように魚の動きから目を離さない。


 自分の影で魚を驚かせないように、湖面に映る影に気をつけながらキャメルは魚の群れを追う。


「あと少し」

 群れは扇形に仕掛けた網の中に入り始めていた。


 方向を大きく変えればまだ逃げられるので、油断は出来ない。


 やがて魚の群れは扇形の頂点を過ぎ、コの字に仕掛けた網の方へと入り始める。


「ここまで来ればいいかな」

 ダメ押しとばかりに、キャメルはロックブレスを数発、魚の群れの後方に撃ち込み追い立てた。


 慌てた魚が次々とコの字の網の方に入っていく。


 コの字の網の外に待機していたドドンゴ達が、キャメルに向かって手を振る。


 ありがとうの合図だ。


 その後、ドドンゴ達はコの字の網の中に投網を投げ込み、魚を次々と船に引き上げていく。

 何度かと網を投げ終えると、最後にドドンゴはクロッポに頷く。


 クロッポはコの字の網の一部を爪で引っかけて、中の魚を逃がし始めた。


「お魚、逃げちゃうよ」

 ミケラが心配になって聞く。


「いいんだよ、必要だけもう獲ったから。後は逃がして上げないと、お魚いなくなっちゃうからね」

 自足自給の生活をしているので、必要なだけ獲れば後は逃がして上げるのが生活する上で必要だと、体験で判っていたのだ。


                       (Copyright2025-© 入沙界南兎いさかなんと)

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