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ケットシー物語 クロ、故郷に帰る 44

 プラオは首を下げていなかったので、プラオのカゴには誰も乗らない。


 と言うか、乗る事が出来ない。


「あのカゴ、誰も乗らないの?」

 ミケラがキャメルに聞く。


「プラオのカゴは帰りに魚を入れて帰るからね、だから行きは空なんだよ」

 キャメルが説明してくれた。


「そうなんだ」

 ミケラは納得した。


「みんな乗ったようだな、じゃ行くぞ」

 クロッポの合図でドラゴン達が一斉に羽ばたく。


 羽ばたきによって、盛大に土埃つちぼこりが舞い上がったが、カゴの方には風も土埃も来ない。


「風もホコリも来ないね」

「うん、下はホコリでいっぱいなのに」

 ミケラとサクラーノが顔を見合わせる。


「おいら達の身体の下にいるから、風もホコリも来ないんだよ」

 キャメルが説明する。


「どうして?」

 ミケラが首を捻った。


「理由はよく判らないけど、首の下にカゴを下げていると風が当たらないんだ」

 キャメルもよく判っていないようだ。


「クロッポさんや神龍様なら判るかもしれないから、後で聞いてみたら?」

「うん、聞いてみる」

 ミケラは大きい声で返事をした。


 ドラゴンが首から提げたカゴに揺られ、ミケラ達は空の旅を。


 ニュート村からシャングリラの方へ飛ぶと、直ぐに広大なジャングルが広がっていた。


「木が一杯だね」

 チャトーミに抱え上げられ、カゴから顔を出したミケラが目の前の景色に目を見張る。


 ジャングルはシャングリラを囲むように広がっており、もし迷い込んだら出てくるのはかなり難しいだろう。


「ホントに凄いね、こんなに沢山の木、見るの初めてだよ」

 王都の北側から東側にかけて森が広がっているが、猟師や山菜採りに行くくらいしか森に入る事はない。


 そもそも、こんな高いところからジャングルを見渡す機会など、普通の生活をしていればない事なのだ。


 ミケラの隣で、黒妙に持ち上げて貰ってサクラーノもカゴから顔を出して景色を見ていた。

「ずっと木ばっか」

 サクラーノも広がるジャングルを、ほぇと言う顔で見ていた。


「もう少しすると、一番近い湖が見えてくるよ」

 キャメルが声をかけてくる。


「湖?」

 サクラーノは湖を見た事がないので首を捻る。


「おっきい水が一杯あるところだよ」

 ミケラは見た事があるので、両腕を使い大きな輪っかを作って説明する。


「水が一杯あるところ?」

 サクラーノが思い浮かべたのは、この前、タマーリン達に連れて行ってもらった浄水場の池。


「浄水場の池くらい大きい?」

「あの池よりもっと、もっと大きいよ」

 ミケラがこれでもかというくらいに腕を広げて説明する。


                     (Copyright2025-© 入沙界南兎いさかなんと)

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