ケットシー物語 クロ、故郷に帰る 38
「それでボクのアイスブレスってわけ。凍らせてしまえば傷みにくくなるんだよ」
プラオが引き継いで説明する。
「おおっ、アイスブレスって凄い」
「フーだけで、お魚カチコチだった」
ミケラとサクラーノが、アイスブレスの凄さに目を輝かせる。
「そうだ、キャメルの方のカゴを触ってごらんよ」
プラオの言葉に、
「あのカゴ?」
ミケラが指さし、
「そうだよ」
とプラオが頷く。
「いこ」
サクラーノがミケラの手を引き、
「うん」
とミケラもサクラーノの手を握る。
二人してキャメルの前のカゴの前で行くと、両手でペタペタと触った。
「少し冷たい」
「うん、冷たいね」
カゴは触ると少し冷たかったのだ。
でも凍っているようには見ない。
「へへへ、お魚を入れる前にカゴの中にアイスブレスをして、カゴの内側を凍らせたのさ」
プラオが自慢げに話す。
「カゴも凍るんだ」
「カゴ凍るんだ」
魚だけではなくてカゴを凍らせたと聞いて、目を丸くして驚くミケラとサクラーノ。
二人はキラキラした目でプラオを見上げ、それからキャメルの方を見る。
その目はワクワクで一杯だ。
「お、おいらか、おいらなのか?」
ミケラとサクラーノに、きっと凄い事やってくれるに違いないという目で見上げられ、戸惑うキャメル。
「おいらはアースドラゴンだから・・・プラオみたいに見ても面白くないよ」
なんとか二人を宥めようとするが、
その言葉で二人の目から、
「やって、面白い事やって」
光線が止まる事はなく、それを突っぱねる事も出来そうにない。
「仕方ないな、本当に見ても面白くないぞ」
キャメルはやれやれとばかりに後ろに下がり、カゴから離れると翼を広げた。
「危ないから、そこのおちびちゃん達をしっかりと捕まえておいてよ」
キャメルの言葉に、チャトーミがミケラとサクラーノの身体を腕の中にしっかりと抱き留める。
それを確認すると、キャメルが翼を羽ばたかせた。
もの凄い風が起こり、同時に土埃が舞い飛ぶ。
ゆっくりとキャメルの大きな身体が宙に浮き、徐々に高度を上げていく。
いきなり力強く飛び上がらなかったのは、カゴやミケラ達を吹き飛ばさない為だろう。
半部くらいの大きさに見えるくらいに上昇すると、
「やるからよく見ていてね」
キャメルが空の上から声をかけてくる。
キャメルが上空に上がった事のよって、羽ばたく風も届かなくなり、みなが顔を上げてキャメルを見上げる。
「ロックブレス」
キャメルの口が大きく開き、岩の粒が幾つも吐き出されて彼方へと消えて行った。
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