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ケットシー物語 クロ、故郷に帰る 32

「そうだよ、クロと同じ街から来たんだよ」

 ミケラがニコニコ笑いながら答えた。


「クロと申しますと?」

 聞き慣れない名前に、クロッポは首を捻る。


「あなた達の言う神龍様の事ですわ、名前がないと不便ですから」


「わたしが付けたんだよ」

 ミケラがエッヘンと胸を張った。


 因みに、人間に変身したクロが全身真っ黒だったのでクロと名付けられたのは内緒。


 更に、この世界では名付けしても、いきなり魔力がごっそり減ったり、能力が爆上がりするとか一切ないから。


 みんな気がついていると思うけど、この話はほのぼのファンタジーなので。

 敢えて二回言わせて貰います、この話はほのぼのファンタジーなんだよぉぉぉ!



「神龍様、他所よそじゃそんな名前で呼ばれているんだ」

 クロッポより少し身体の小さい青い鱗のドラゴンが驚きの声を上げた。


「プラオ、お客様の前で失礼でしょ」

 クロッポに怒られて、


「す、すみません」

 慌てて謝る。


 どうやら、このドラゴン達のリーダーはクロッポのようだ。


「神龍様と親しくして頂き、誠にありがとうございます」

 クロッポは深々とミケラ達に頭を下げた。


 プラオともう一人の茶色がかった鱗を持つキャメルが顔を見合わす。


「いくら神龍様のお客様でも、クロッポさんがそこまでする必要はないんじゃ」

 キャメルが心配して声をかけた。


「お前達、神龍様のお客様だからだけで俺が頭を下げていると思っているのか?」

 クロッポの言葉に、顔を見合わせ首を捻るプラオとキャメル。


「これだけの力を感じられないとは、困った二人だ」

 クロッポは溜め息をつくと改めてミケラとサクラーノを見た。


 二人が虹色に輝くオーラで繋がっているのがはっきりと見える。


「あのオーラの色は・・・まさかな」

 小さく首を横に振る。


「今日はどうだった?」

 ドドンラが今日の獲れ具合を聞くと、


「ははは、見て見て」

 キャメルが自分が首から提げているカゴを外して、地面の上に置く。


「こっちも見てよ」

 プラオも同じようにカゴを置いた。


「見ていい?」

 ドドンラを見上げるミケラとサクラーノ。


「いいよ」

 ドドンラがニコッと笑って頷いた。


「わーい」

 許可が出た途端に走り出す、ミケラとサクラーノ。


 その後を追う、チャトーミとキマシ達。


 その後ろ姿を微笑ましく見送るタマーリン。


「少々お伺いしたい事が御座いますの、よろしくて?」

 タマーリンがクロッポに声をかける。


「なんだ?俺に判る事なら答えるが」

 と言いつつ、クロッポはタマーリンの方を少し苦しそうな表情で見る。


                          (Copyright2025-© 入沙界南兎いさかなんと)

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