ケットシー物語 クロ、故郷に帰る 26
「本当だ、カチカチ」
「カチカチだ」
無邪気にペタペタと地面を触りまくるミケラとサクラーノ。
「ホントだね、カチカチに硬い」
「確かに、これは剣で切るのは骨が折れそうだ」
「硬いけど・・・どこかで見たような?」
ギリが見覚えがあるようで、思い出そうと首を捻る。
「あっそうだ、砦だ。タマーリンさんが魔法で焼いた後の土と似ている」
タマーリンが砦で、魔獣の足止めの為に谷の道を魔法で焼いて溶岩の海に変えた後に出来た土の塊に似ていたのを思い出したのだ。
「そうですわね、この辺り一帯となるとかなりの大魔法が使われたのでしょうね」
タマーリンも、ギリの言葉に頷く。
「いいえ、違います」
しかし、エミーイがそれを否定する。
「違いますの?」
頷くエミーイ。
「ここで暮らしやすいようにと、神龍様がブレスでこの辺り一帯を焼き払ってくれたそうです。その後、神龍様の鱗を使って平らにして村を作ったんだそうです」
ケイ素を沢山含んでいる土に高熱をかけると、ケイ素が解けて土と交わりレンガとなる。
それを知っていてクロは広範囲でレンガを焼いたのだろう。
高火力のブレスを広範囲に吹ける、神龍だからこそ出来る荒技だ。
後から神龍の鱗で磨いたのも、素の土をそのまま焼いたら、土の成分によって溶け方が変わるので、焼いた後はどうしてもボコボコになってしまう。
そのボコボコを取る為に、超々レア素材である神龍の鱗で磨いてボコボコを取ったのだろう。
クロの鱗なら、一枚でちょっとしたい家サイズはあるので、土地を平らに均すのに重さも大きさも丁度いい。
神龍の鱗を重いコンダラとして使ったのだ。
因みに、重いコンダラの語源は巨人の星がアニメされた際に、オープニングで「思い込んだら」の歌詞と整地ローラーを引く場面が重なり、整地ローラーの事を重いコンダラと呼ぶようになったのが最初。
「クロがやったの?」
ミケラがタマーリン方を見る。
「そ、そのようですわね」
流石のタマーリンも驚いている。
クロの凄さを、少しだけ理解したのだ。
「まっ、クロはクロですわね」
一瞬、タマーリンの中でクロの株が上がったが、光の速さで元の位置に戻されるのだったが。
「今は家の数が増えてしまって、神龍様に造って頂いた土地からはみ出してしまっていますけれど」
申し訳なさそうに笑うエミーイ。
「そんな申し訳なさそうに笑う必要は御座いませんわ。それだけ、ここの生活が暮らしやすいと言う事なのですから」
暮らしやすい土地で無ければ住民は増えない。
外敵がいたり、食糧の確保が厳しい土地は生活するので一杯になってしまう。
ここには生活を脅かす外敵もいなくて、食糧の確保も大変ではないから住民も安心して暮らせていると言う事。
安心して暮らせるから住民が増え、家が増えるのだ。
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