ケットシー物語 クロ、故郷に帰る 23
「そうかい、食事の方は任せるよ」
と言いつつ、お妃様はスープをスプーンにすくって口に運ぶ。
スープは香草に卵、刻んだ白身魚のスープでさっぱりしていて飲みやすかった。
「これも美味しいね」
ニコッと笑うお妃様。
結局、山盛りサラダもコッペパンもすっかりと食べきり、お妃様達は満腹で寛ぐ。
部屋でまったりと寛いでいると、キマシ達がやって来て、
「集落の案内してくれるって、行きませんか?」
と声をかけてきた。
「エミーイさん、キマシが無茶言って済みません」
ギリの声も聞こえる。
どうやらキマシがいつもの如く、無茶を言ったようだ。
「いえいえ、神龍様からお客様のご要望は出来る限り伺うようにと言われていますから・・・お姉ちゃん、行っていいよね?」
メグルに聞く。
「こちらはなんとかするから、エミーイはお客様をお願いね」
「う・・・はい」
エミーイが案内する事が確定した。
「わたしも行く」
ミケラが手を上げ、
「いく~~」
サクラーノも手を上げた。
「ミケラ様が行くのでしたらわたくしも」
タマーリンは当然のようについてくる。
「姫様、お出かけするの?」
それを隣の部屋で聞きつけたチャトーミが、パンツ一枚で部屋から飛び出してくる。
「チャトーミ、服を着てから外に出ろ」
慌てて追いかけてきたチャトーラに怒られる。
チャトーミは部屋で落ち着くと、着ている物を脱いでパンツ一枚になるクセがあるのだ。
同じ部屋に虎次郎もいるのに、一切気にしない。
武茶士がこの世界に来たばかりの時、しばらくチャトーラの家に世話になっていたのだが、その時も目のやり場に困ってかなり苦労していた。
「あ~ん、兄ちゃん」
ジタバタしながら、部屋に連れ戻されていくチャトーミ。
「・・・」
虎次郎がいつの間にか廊下に立っていた。
誰も声をかけない。
「・・・」
やっぱり誰も声をかけない。
「・・・」
恨めしげにレッドベルを見る。
「・・・師匠も一緒に行きますか?」
やっと気がついて貰えて、尻尾がピンと立つ虎次郎。
「うむ、参ろう」
その声は重々しく、軽さなど微塵も感じさせなかったが、ピンと立った尻尾が全てを語っていた。
ドラゴニュートの街を案内して貰うメンバーは、キマシ達三人とミケラ、サクラーノ。
タマーリン、虎次郎、チャトーミの八人だった。
他のメンバーは、
「大勢でゾロゾロ行くのも迷惑になるから」
と宿でお留守番。
マオットもお留守番組だ。
「いいな、予も行きたかったのじゃ」
エミーイに連れられて、集落の方に歩いて行くミケラ達を羨ましそうに見送る。
「なあ、マオ。それまだ続けるのか?」
続けるのかはマオットの事だ。
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