ケットシー物語 クロ、故郷に帰る 19
「ドラゴニュートってなぁに?」
ミケラが話しについて行けなくて首を傾げた。
「ドラゴニュートですか?ドラゴニュートはドラゴンの亜種で、人間に近いドラゴン種族の事ですよ」
「?」
それでもミケラは判らないという顔で、クロを見上げた。
「そうですわね、わたくし達ケットシーが猫の妖精というのはご存じでしょ?」
タマーリンが助け船を出す。
「そうなの?」
初めて聞いたという顔をするミケラ。
そこから説明が必要のようだ。
「わたくし達ケットシーは、猫の妖精としてこの世界に生まれたのですよ」
タマーリンは根気よく説明を始めた。
「そうなの、じゃあ妖精さんみたいに、いつか羽が生えて飛べるようになるの?」
ミケラの目がキラキラと輝く。
その目をつい見つめてしまったタマーリンがふらっと倒れる。
「またか」
「懲りない奴じゃん」
「四露死苦」
小妖精達が慌てて駆けつけてきて、タマーリンの顔を叩いて目を覚まさせた。
「あら、わたくしとした事が申し訳ありません」
ミケラに頭を下げる。
「あたい達にも言う事あるんじゃないの?」
「そうじゃん、そうじゃん」
「四露死苦(`⌒´)」
タマーリンの顔の周りでギャンギャン吠える小妖精達。
「いつもお世話になっています」
しおらしく頭を下げるタマーリン。
それはミケラが見ているからであって、ミケラがいなかったら魔法で吹き飛ばされているだろう。
人に何かして貰ったらきちんとお礼を言う、生活する上で絶対に守らなければならないルール。
子供の前で大人がきちんとやってみせれば、子供も覚えるのだ。
ミケラ至上主義者のタマーリンにとっては、自分のプライドなどよりもミケラの教育の方が上なのだ。
「コホン・・・それでは続きを」
さっきの続きを始める。
「ケットシーは猫の妖精なので、背中に羽が生えて飛んだりはしませんわ」
それを聞いて、
「なぁんだぁ」
ガクッと肩を落とすミケラ。
「空は飛べませんが、代わりにタレントがありますでしょ?」
「うん」
ミケラの返事に、うんうんと頷き笑うタマーリン。
「人間や他の種族はタレントは無いんですよ」
タレントはケットシー特有の能力なのだ。
「そうなの?」
「はい」
「昔のケットシーは、ミケラ様みたいに影移動が出来たんですの」
「おおっ」
驚きの声を上げるミケラ。
「それが人間の間で暮らすようになって、影移動の能力がタレントに変わっていったんですわ」
これは一般のケットシーの間には忘れられてしまった話だった。
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