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ケットシー物語 クロ、故郷に帰る 17

「お客様達の宿は出来ています、昔造ったモノを手直ししただけですがご満足頂けると思いますよ」

 ちょっと自慢げに話す長。


「ではこちらに」

 長が先頭に立って案内する。


 しかし、ずんずん進むのでミケラの足では追いつけない。

「ちょっと長、お客様を置いていってはダメでしょ」

 クロがストップをかけた。


「も、申し訳ありません」

 慌てて止まる長。


 長の身長はおよそ二十五メートル程。

 人間の十倍以上の大きさだ。

 短足なので歩幅は身長程はないが、それでも一歩でミケラの十五歩近くになる。

 普通に歩いたらミケラが追いつけないのは当然。


 長はミケラ達の様子を見ながらゆっくり、ゆっくりと歩く。

「あちらがそうです」

 長が指を指す。


 長の指の先の方には人間が住んでいるような集落があり、その集落から少し外れた所に、集落の建物より少し立派な平屋が建っているのが見えた。



 サクラーノの目がキランと光った。

 ミケラの身体を掴むと、ミケラと一緒に走り出し瞬く間に平屋に着いてしまう。


 あまりの速さに目を剥いて驚く長。

「あはははは、元気なお子さんですね」

 長は、心の中で思い出したくないモノが這いずりだしてくるようなイヤな感覚に、少し困ったような表情で笑う。


「こんにちは、お嬢さん」

 サクラーノが家に着くと、玄関に立っていた女性が挨拶をしてきた。


 サクラーノとミケラが顔を上げると、玄関にはリザードマンを人間に近づけたようなメイド服姿の女性が四人立っているではないか。


「こんにちは、わたしサクラーノだよ」

「こんにちは、わたしはミケラです」

 サクラーノは軽く手を上げ、ミケラはきちんと頭を下げた。


「あら、まだ小さいのに挨拶が出来て偉いわね」

 一番前のメイドがミケラ達を誉める。


「それではわたし達もご挨拶しましょう、わたしは長女のメグル」

「わたしは次女のジョアン」

「わたしは三女のベスン」

「わたしは四女のエミーイ」

 それぞれ自己紹介をする。


「ご滞在中は、わたし達がお世話をさせて頂きますわ」

 片手を胸に当て、もう片手でスカートを持ち上げながら、四人はキレイに揃って頭を下げた。


「すごい、すごい」

 あまりにもキレイに揃っていたので、手を叩いて喜ぶミケラとサクラーノ。


「二人とも、先に行きすぎじゃ」

 マオが飛んでやって来た。


「マオちゃん」

 ミケラが名前を呼ぶと、

「わ、我はマオではない、マオット・・・だ」

 まだ続けるようだ。


「こんにちは、あなたはマオットお呼びすればよろしいのかしら」

 メグルが首を少し傾げる。



                      (Copyright2025-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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