表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
547/610

ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 135

 勢いよく走り出した馬の向きを魔道研の方に向けると、もう一度手綱を振るう。


 馬の速度が更に増す。


 まるで急ぐトランスロットの気持ちがわかっているように、馬は王宮の敷地内を魔道研を目指して疾走した。


 サウが見たら、

「こいつ、こんなに速く走れたのか」

 と驚くような速さで。


 瞬く間に魔道研の前までたどり着くと、馬を止めてトランスロットは魔道研に飛び込む。


「キティー、キティーを呼んで。サウが倒れた」

 受付の女性が慌ててトランスロットの所に駆け寄ってくる。


「どうしたの?」

「サウが、サウが馬車の中で倒れて・・・動かないんだ」

 話を聞いた受付嬢は急いで受付の中に戻ると、何かの装置に話し掛ける。


「どうしたのトランスロット」

 騒ぎを聞きつけてサビエラもやって来た。


「サウが馬車の中で倒れて・・・今、キティーを呼んでもらった」

 その場にへたり込んで、説明するトランスロット。


「サウが」

 魔道研の外に止めてある馬車に視線を移す。


「ケガ人が出たの?」

 キティーが走ってやって来た。

 ここまで全力で来たのだろう、激しく息をしている。


「うん、馬車の中。今、ゆいが側にいる」

 ゆいが側にいると聞いて、少し安心するキティー。


「あの子がいるなら、慌てなくてもいいわね」

 その場で息を整えると、

「選手交代と行きますか」

 腕をぐるぐる振り回しながら、馬車に向かった。


「なに、何があったの?」

 モモエルもよたよたとやって来た。


「モモエル様、どうしてここに?」

 サビエラが聞くと、


「キティーにちょっと体力の補充を・・・」

 目が泳ぐモモエル。


「また、キティーに無理を言ったんですか」

 睨むサビエラに、


「ちょとよ、ちょっとだけ。今夜も色々と実験があるし・・・」

 実験があると、自分の体力にお構いなしに没頭してしまうのが魔道研の研究者なのだ。


 それでは大切な研究者が身体を壊してしまうと、王宮からも無茶な研究はしないようにお達しが出ていた。

 それに伴い、キティーにも健康を害する場合は回復を断るようにと王様直々の手紙が届いていたのだ。


 真面目なキティーは当然、王様の命令を実行しようとしたのだが、研究をしたい研究者達は、あの手この手でキティーに回復させようとするのだった。

 魔道研は逆ブラック企業なのだ。


「モモエル様!」

 サビエラに睨まれて縮こまるモモエル。


「あっ、トランスロット・・・どうしたの?」

 サビエラの足下にへたり込んでいるトランスロットを発見。

 チャンスとばかりに話題を振る。


                       (Copyright2025-© 入沙界南兎(いさかなんと))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ