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ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 132

 お昼が終わり、二人が厩の裏手に出ると、既に馬車に馬が繫がれていた。

 繫がれているのは一頭、うまやで一番大人しい馬だ。

 

 サウは既に御者の席に座っていた。

「よし、トランスロットはここに来い」

 トランスロットを自分の隣に座らせる。


「ゆいはこっちだ」

 トランスロットと反対の自分の隣を指す。


「トランスロットの隣にしてやりたいけどな、バランスが悪くなるからな」


 御者台は簡単に板で作られているだけで、大人でも三人は余裕で座れるのでトランスロットの隣が空いている。


 ゆいくらい座る余裕はあるのだが、それだとバランスが悪くなるので避けた。

 バランスが悪くなると、馬車が転倒する事があるからなのだ。


 無茶な事をしなければ転倒の心配はないが、細かい事でもきちんと教えないといけないというサウの心のあらわれでもあったのだ。

 何事も最初が肝心。


「よし、操作の基本を見せるからよく見ておけよ」

「うん」


 サウは馬車の操作をやって見せた。


 手綱を両手で持って軽く振ってやると馬はゆっくりと歩き出し、馬車も進む。


 手綱を右側を引くと馬もがゆっくりと右に向かって進み出し、馬車も馬の動きに合わせて右へと曲がり始める。


 左も同じ。


 手綱を強く後ろに引くと馬が停止し、馬車も止まった。


「操作の基本はこれだけだ、後は馬を速く歩かせる方法だけど。それはまだ早いから、この操作に慣れてからだな」

 一通り説明が終わると、サウは立ち上がって荷馬車の方へと移動。


「トランスロット、やってみろ」

「う、うん」

 トランスロットが御者台の真ん中へと移動する。


「手綱を両手で持って、ゆっくり大きく振るんだ」

 言われたようにトランスロットは手綱を大きく振った。


 つもりだった。


 馬は微動だにしない。


「はははは、まだ振りが小さいぞ。それじゃあ、馬に伝わらない」

 トランスロットはもう一回手綱を振ったけれど、やはり馬は動いてくれなかった。


「まだ身体が小さいからな、自分じゃ大きく振っているつもりなんだろう」

「う、うん」

 トランスロットは頑張って振っているつもりなのだが、手綱の動きがしっかり馬に伝わっていないので馬は動いてくれないのだ。


「そうだな、上に振った時に立ち上がって下に振る時は座るというのはどうだ。本当は馬が動き出す時は座っていないと危ないけどな、その馬は大人しいしゆいも一緒だから大丈夫だろう」


 馬が動き出す時は、何かの弾みで馬が暴走した時の備えて座っていないと危険なのだ。


 厩の中で一番大人しく余程のこことがないと動じない馬を選び、ゆいが一緒にいれば馬が大人しくなるのを考えての苦肉の策なのだった。


「やってみる」


 サウは後ろからトランスロットのズボンのベルトをしっかりと掴む。

 これなら多少馬が変な動きをしても支えられる。


 言われたように立ち上がると同時に手綱を上に振り、直ぐにしゃがんで下に振ってみた。

 馬が歩きめ、馬車が動きだしたではないか。


「やった、動いたよ」

 はしゃぐトランスロット。

 

 こうして、トランスロットの馬車修行の第一歩がスタートしたのだ。

後書きです


何とか道筋が見えてきました。

ありがとうベレー帽を被った眼鏡の神様。

来週終る予定だけど、文章量次第では少し伸びるかも。

五千字くらいなら、無理に詰め込むけど。

少し長めになるつもりでいてください。


また来週(@^^)/~~~


                      (Copyright2025-© 入沙界南兎(いさかなんと))


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