ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 130
「問題なし」
キティーにお墨付きを貰い、トランスロットは少し休んでから厩に向かう事にする。
休んでいる間に、モモエルはキティーに回復して貰い、意気揚々と魔道研へ出勤していくのを見送る。
「トランスロットは大丈夫?」
サビエラが心配して、残ってくれようとしたが、
「俺が見てるっす。かまわず出勤して下さい」
門番が側にいてくれ事になり、
「それじゃあ、お願いします」
門番に頭を下げてから、サビエラはトランスロットの方を向き、
「無理しちゃダメよ、無理ばかりするとあんな大人になっちゃうから」
モモエルの方を向く。
トランスロットは困ったように笑った。
モモエルはいい人だと思うし、姉のように慕ってはいたが色々とやらかしている姿も見てきた。
その筆頭がミケラだろう。
ミケラ愛が強すぎて、時折しまらない顔で笑っているのをいつも見ている。
「うん、ボクならないよ」
はっきりとしっかりと答える。
「そう、ならいいわ」
ほっと胸を撫で下ろす。
「それじゃあ、わたしも行くから」
もう一度門番に頭を下げてから、サビエラはモモエルの後を追いかけていった。
「なあ坊主」
門番が声をかけてきた。
顔を上げるトランスロット。
「お前、こないだ広場で歌を歌ったタマンサの子供だろ?」
「うん」
「お前の母ちゃんの歌、凄かったな。俺、一発でファンになっちまった」
門番はタマンサのファンだった。
「それでさ、また歌聞きたいんだけど・・・次、いつ歌うか知ってるか?」
トランスロットは少し考えて、
「母さんは歌いたいって言ってたけど、一人じゃ決められないって」
「どうしてだ?」
「う~~んと」
トランスロットは思い出そうと頭を捻る。
「準備とか有るから、一人じゃ無理って言っていたよ」
ゆいが隣から囁く。
「そうだ・・・ステージの準備があるから、大きいステージに成る程準備が大変だって言っていた」
トランスロットも、先日、宿屋でステージの準備を手伝ったばかりだ。
ステージに飾り付けをするだけだったが、それでも大変だった事を思い出す。
最初からステージを作る大変さも、街に戻ってきて直ぐに見る事にもなった。
「成る程、それもそうだな」
門番も納得したようだ。
「僕らも行かないと」
トランスロットは立ち上がり、ゆいが立ち上がるのに手を貸す。
「もう行くのか」
「うん」
それからトランスロットは門番にペコリと頭を下げ、ゆいも慌てて頭を下げる。
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