ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 125
夕食が終わり、家族の団らんも済むとお風呂に入って寝るだけだ。
ミーランダは今日は家で夕食を食べると、早くに帰っていったのでミケラとサクラーノをお風呂に入れるのはロレッタかタマンサになる。
お風呂に入れると言っても、本当にお風呂に入るわけでは無く身体を軽く絞ったタオルで拭いて、その後乾いたタオルで拭き取るだけの簡単なモノなのだけれど。
最初の頃のケットシーは猫が二本足で立っているという感じだったのだが、人間社会で長く暮らしている内に次第に人間の血が混じり、顔や手足に毛がなくなり、顔付きも人間と同じになっていったのだ。
お風呂も烏の行水ならぬ猫の行水・・・行水にすらならない程に早く済ましている。
ミケラとサクラーノのお風呂を済ませパジャマに着替えさせてベッドに寝かしつけてから、ロレッタは食堂に戻ってきた。
「お疲れ様」
タマンサが労いの声をかける。
ロレッタはふとマオやゆいの方を見ると、
「あなた達、ウチのお風呂でいいの?」
今まで疑問に思っていたことを口にした。
「どういう事じゃ?」
マオが首を傾げる。
「だってあなた達、わたし達と違って身体に毛が生えてないじゃない」
マオとゆいは人間と同じで身体が毛皮になっていない。
「わたし達みたいに毛が痛むわけじゃ無いから、人間のお風呂の方がいいんじゃないの?」
ケットシーが身体を拭くだけで済ませているのは、人間のように湯船に浸かると身体を覆う毛から油分が抜けて痛んでしまうからだ。
それに猫はお風呂嫌いなので、その妖精であるケットシーもお風呂には本能的に苦手意識を持っている。
だが、マオもゆいも傷む毛皮も無ければ、お風呂を苦手にする本能も持ち合わせていない。
「予は人間のように身体が汚れることもない、身体を拭くだけで充分じゃ」
マオの身体は人間のように皮膚から老廃物が出ると言うことはないので、タオルで拭いて身体の表面の汚れだけ落とせば充分なのだった。
「わたしも、たまに水浴びするだけだったから」
ゆいも人間のような新陳代謝がないので、マオと同じくタオルでその日の汚れを拭き落とせば充分。
「あなた達二人、人間じゃないものね」
溜め息交じりに納得するロレッタだった。
因みに、マオもゆいもトイレは不要。
マオは食べたり飲んだりしたモノは、体内で闇に変換して活動エネルギーや飛行エネルギーとしている。
マオが見た目より力が強いのもその為だ。
ただ、ミケラに纏っていた闇を吹き飛ばされからは、一度に出せる力に制限が付いてしまっていた。
ゆいも食べた食事を体内でオーラに変え、余った分は光にして翼から放っている。
天使の翼が光っているのは、余ったエネルギーを身体から放出しているからなのだった。
故に、マオもゆいもいくら食べても太らない。
羨ましい限りだ。
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