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ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 123

 いつもはサクラーノがミケラとマオの手を掴んで、遊び場まで突っ走しるのだが、今日はトランスロットゆいも一緒なのでトランスロットと一緒に歩く。


「お兄ちゃん」

 トランスロットの手を握る。


「サクラーノ?」

 トランスロットが小首を傾げる。


「えへへへへ」

 はにかんだように笑うサクラーノ。


 一人でいることが好きなトランスロットと、こうして一緒に遊び場に行けるのが嬉しくて仕方ないのだ。

 本当は朝も手を繫いで歩きたかったのだけれど、早く遊びに行きたかったのでミケラとマオの手を掴んでしまってからトランスロットのことを思い出したので、ミケラとマオと並んできた。


「あ~っ、サクラーノずるい」

 ミケラがサクラーノとトランスロットが手を繫いでいるのに気がつく。


 トテトテとトランスロットの所まで来ると、サクラーノと繫いでいる手に自分の手も重ねた。


「わたしが先にお兄ちゃんと繫いだのに」

 サクラーノが怒る。


「わたしだってお兄ちゃんと手を繫ぎたいもん」

 言い返すミケラ。


 二人はトランスロットと手を繫ぐことで睨み合う。


「ほらほら、二人ともケンカしないの」

 トランスロットが二人を宥めようとするが、

「だって」

 と逆に二人から見上げられてしまう。


「ミケラちゃん、こっちきて」

 ゆいがミケラを呼ぶ。


「なぁに」

 呼ばれたのでゆいの所にいくミケラ。


「こうすれば二人で手を繋げるでしょ」

 ゆいは自分が繫いでいたトランスロットの手をミケラに握らせる。


「いいの?」

 ミケラはゆいを見上げた。


「うん、いいよ」

 笑顔で返す。


「ゆいちゃん、ありがとう」

 喜ぶミケラを見て、ゆいの中で暖かいモノが生まれる。

 それは嫌なモノではない。

 ゆいはそれが大事なモノだという気がして、心の中で抱きしめた。


 唐突にミケラがゆいの手を握ってきた。

「ゆいちゃんも一緒」

 ニコッと笑うミケラ。


「マオちゃんも」

 サクラーノはマオの手を握る。


「みんな一緒だ」

 ミケラの言葉に、顔を見合わせて、

「それじゃ行こう」

 トランスロットのかけ声と共に、手を繫いで遊び場を目指す。



「うふふふ」

 その様子を後ろからタマーリンが温かい眼差しで見ていた。

「みんな良い子ですわね」

 隣の白虎に話し掛ける。


「ああ、そうだな」

 ぶっきらぼうに答える白虎。


「もっと愛想よくなさったら?」

 タマーリンに言われても、こうなった原因はタマーリンにあると言わんばかりに憮然とした顔をする白虎。


 ミケラ達が出かけるなら、護衛である白虎も当然その後に続かなければならない。

 それが護衛の役目なのだ。


「お待ちなさい」

 出かけようとした瞬間、タマーリンの浮遊魔法に捕まってしまったのだ。


「一緒に参りましょう」

 ニコニコ笑うタマーリンの横に降ろされ、それから一緒にここまで歩いてきた。


「こうやって二人一緒に歩いていると、まるでデートみたいですわね」

 と言う言葉に、白虎は心の底から嫌そうな顔をする。


「なんですの、その顔は?こんな美人を捕まえて失礼ですわ」

 タマーリンがプンプンと怒るが、それが本心で無いことは白虎はよく判っている。


 確かにタマーリンは美人だ。

 プロポーションも抜群に良い。

 だが、性格は最悪以外のナニモノでもない。


 今だって怒っているが、それはフリだ。

 心の中では怒っていない。

 白虎はタマーリンの性格の悪さも十分承知している。


「あんたの遊びに付き合う気は毛頭ない」

 それだけ言うと、白虎は視線をミケラに戻す。


「つまらない男ですわ」

 タマーリンは少し機嫌を損ねたような表情をするが、それもどこまでも本心か判らない。

 タマーリンの遊びに振り回されるのは御免被ごめんこうむるというのが、白虎の偽らない本心だった。


後書きです


今週の二話目、短くなってしまいました。

いつもは大体千文字くらいで分けているんですが、二話目はどうしてもそこで切りたかったので。

心がそれ以外を拒否したので、そこで切りました。


その分、三話目が長くなってます。

作者の我儘ですみません。


また来週(@^^)/~~~


                        (Copyright2025-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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