ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 122
「お母さん」
そこへミケラとサクラーノがやって来た。
「あら、お昼寝から起きてきたのね」
「うん」
二人は早速、両側からタマンサにしがみつく。
タマンサも二人の頭を撫でる。
「おじさんは白妙と」
「黒妙のお父さん?」
テーブルの下から白虎を見上げて、二人同時に首を傾げた。
「まるで双子だな」
息がピッタリなのを見て、白虎はついそう思ってしまった。
「やっぱり、さっき見たのは見間違いじゃないと言うことなんだな」
ミサケーノからミケラとサクラーノに戻る場面を思い返して、心の中でそっと溜め息をつく。
「お昼から、また遊びに行くの?」
「うん」
二人とも元気よく答えた。
「そう、じゃあ気をつけて行ってらったしゃいね」
二人を送り出す。
トランスロット、ゆい、マオがミケラ達に続く。
タマンサはミケラ達を見送りながら、
「ミケラが帰ってきてくれて、本当によかった」
と微笑む。
ミケラがお城に連れ戻されてタマンサは病気になってしまったが、それ以上に辛い思いをしていたのはサクラーノだった。
ミケラがいなくなった後、サクラーノは午前中目一杯遊んで帰ってくると、お昼から夕方までぐったりとしていたのだ。
病に伏せながら、サクラーノのこともタマンサの病を重くする元になっていた。
タマンサにとって、ミケラもサクラーノもかけがえのない我が子なのだ。
ミケラがが帰ってきて、こうやってお昼も一緒に遊びに出て行ける。
元気な二人の後ろ姿を見ていると、つい微笑みが出てしまうのだった。
ミケラがいつまでも家にいられるわけでないのは判っている。
判っているが、
「いつまでもこの幸せが続きますように」
と願ってしまうのは贅沢なのだろうか?
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