ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 118
ミケラ達はトランスロット達と一緒に家に帰る。
「ただいま」
「いま~」
家に入るとお昼の仕度をしていたロレッタに、
「お帰り、直ぐにお昼は出来るから手を洗って待っていてね」
と言われたので、お風呂場に行って手を洗う。
テーブルについてしばらくすると、ロレッタとミーランダがお昼をテーブルに並べた。
そこへ、
「あら、間に合ったようですわね」
家の前で「用事が有りますので」と別れたタマーリンが戻ってきたのだ。
一人の男の首根っこを掴んで。
「タマーリン様・・・そちらの方は?」
ロレッタがタマーリンの連れて来た男を興味深げに見る。
服装を見ると、白妙と黒妙の服装に似ている。
「もしかして・・・」
「そうですわ、白妙と黒妙の父親ですわ・・・白虎、ご挨拶なさい」
タマーリンの方が年下だが、完全に上から目線。
「・・・娘がいつもお世話になってます」
怒っても仕方ないので白虎は頭を下げる。
流石に刃の下に心を持つ者だ。
「白妙と黒妙のお父さん・・・母さん」
ロレッタはタマンサの方を振り向く。
タマンサは直ぐに立ち上がると白虎の前に立ち、
「娘さん達にはウチのミケラがお世話になっています」
と頭を下げる。
「あっ、いえ・・・娘達は任務なので・・・」
思いも寄らないことだったので、慌てる白虎。
警護対照の母親からお礼など言われたことはないので、慌てふためいてしまったのだ。
「俺たちが警護するのはお偉いさんか貴族の連中だからな・・・まったくあいつらと来たら」
貴族にいい思い出のない白虎は、心の中で毒づく。
「頭を上げて下さいお母さん・・・」
兎に角タマンサに頭を上げた貰うのが先だ。
「これからお昼なのでお父さんもよかったら・・・しまった、一人分足りない」
ロレッタは慌てる。
白妙と黒妙が来ないつもりで、人数分しか作っていなかったのだ。
「いえいえ、俺は・・・」
白虎が断ろうとしたが、
「わたしの分を出して」
タマンサが速攻で決めてしまう。
「だから俺の分は・・・」
断ろうと、もう一度口にしかけるが、
「無駄ですわ、ここはそう言う家ですわ」
再び、タマーリンに首根っこを掴まれて、無理矢理席に着かされてしまう。
そして、目の前に次々と並べられるお昼。
これは諦めるしかない。
「お母さん、お昼ないの?」
ミケラが聞く。
「うん、一食くらい食べなくても大丈夫よ」
安心させるように笑うタマンサ。
「わたしのを上げる」
ミケラが自分のお皿をタマンサの方へ押した。
(Copyright2025-© 入沙界南兎)




