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転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その30

「け、結構うまいな」

 チャトーラは絵から目を逸らすように誉める。

「そうだね兄ちゃん、上手だね」

 チャトーミはどうしようという顔でチャトーラを見る。

 ミケラの絵が上手と言っても6歳児レベルでの話であり、明らかに武茶志の方が技量は上だ。

 少しくらいの差なら勢いでミケラの勝ちにするつもりでいたのだが、思った以上に武茶志が絵が上手で困ってしまったのだ。

 泳いだ目でタマーリンを見たが、ミケラの勝ちを宣言する気満々で鼻息荒い。

「本当にぶれないねぇ」 

 チャトーラは苦笑交じりの溜息をつく。 

 その頃ミケラは武茶志の絵を食い入るように見ていた。

「気に入ったの?」

 武茶志が聞くと、ミケラは頷く。

「凄いの、この絵とっても綺麗なの」

 それから少し考えると、

「武茶志の勝ち、私より絵が上手なんだから勝ちなの」

 みんなのに向かって言い放つ。

「なっ」

 絶句するタマーリン、しかし、ミケラが決めた事以上、それに異議も言えず悔し紛れに歯噛みをする。

 チャトーラやチャトーミはミケラが決めてくれた事でホッとした。

 どう見ても武茶志の方が絵はうまい、しかし、それを言えばタマーリンと揉める事になるし勝てる気などまるでしない。

 素直に自分の負けを認めてくれたミケラに感謝する。

 そのミケラは再び武茶志の絵を食い入るように見ていた。

「欲しい?」

「うん」

「じゃあ上げるよ」

「わーい、ありがとう」

 ちゃっかりと武茶志の絵を手に入れていた。



「えへへへへ」

 武茶志の絵を大事そうに抱えるミケラ。

「良かったな、姫様」

「うん」

 満面の笑みで返事をする。

「その絵、汚すと何だから仕舞っておこうぜ」

 言われて、ミケラはしばし絵を見つめてから、

「お願い、大事にしてよ」

「任せておけって」

 チャトーラはミケラから絵を受けとり器用に紙の筒を作ると、その中にミケラから受け取った絵を丸めて納めると鞄の中に仕舞った。

「これで大丈夫だ」

 チャトーラはウィンクをする。

「ありがとう」

 ミケラはお礼を言う。



「さてと競技も概ね終わった事ですから、街に戻りましょうか」

「そうだな、もうやる事もねぇしな」

「楽しかったし、もう帰ろう」 

 タマーリンの言葉に皆が腰を上げる。

「武茶志、行くと来ないだろ一緒に来いよ。少しの間なら家に泊めてやるからよ」

「おいでよ、街に来れば仕事や住む場所も見つかるよ」

「いいんですか?」

 武茶志は誘いは嬉しかったが、見も知らぬ自分を家に泊めてくれるというのが信じられなかったのだ。

「いいって事よ、見ててお前は良い奴だって判ったから気にすんな」

 チャトーラは気安く肩を組んでくる。

「でもよチャトーミに変な真似したらただじゃおかないけどな」

「大丈夫、俺は巨乳派ですから」

 武茶志の言葉にチャトーラはにかっと笑う。

「俺もだ、気が合いそうだな」

 二人はガハハハハと笑い合う。

「これだから男は」

 その横でチャトーミが胸を隠すよう腕を組み二人を睨む。

(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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