ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 117
「ミケラ様の護衛ですわね」
いつもは白妙と黒妙が堂々と護衛をしているのだが、今日は二人が寝込んでしまっているので代わりの者だろう。
護衛はミケラとサクラーノが広場に戻る後を追い始めたので、タマーリンが全速力で空中を飛び護衛の前に降り立つ。
「げっ、タマーリン」
護衛は思わず声を上げて一瞬怯む。
が直ぐに踵を返して逃げ出した。
「通行止めじゃ」
その道をマオが塞ぐ。
護衛はマオを無力化するか考えたが、ミケラと親しいのを思い出して両手を上げる。
「降参だ」
抵抗しない意思を示してから、その場にどかっと座り込んだ。
「随分と殊勝な心がけですわね、白虎」
タマーリンがクスクス笑いながら近寄ってくる。
白虎には、その笑い声が悪魔の笑いに聞こえ背中にびっしょりと汗をかく。
「知り合いのか?」
マオが不思議そうにタマーリンの方を見ると、
「白妙と黒妙の父親ですわ」
白妙と黒妙の父親と聞いて、
「おおっ、何時も二人には世話になっているのじゃ」
マオは白虎に近寄ると、その手を取りブンブンと振り回す。
白妙と黒妙は大事な遊び仲間なのだ。
「いや・・・その・・・娘がお世話になっています」
白虎は戸惑いながらも頭を下げた。
「それで、今のを見ましたわね?」
タマーリンに聞かれ、
「いや、俺は何も見ていないし何も聞いていない」
即答する。
「あら、それは良かったですわ。ミケラ様に仇なす害虫でしたらプチッと潰してしまう所でしたもの」
再びクスクスと笑い出す。
その笑いを聞いて白虎は生きた心地がせず、また自分の判断が間違っていなかったと安堵した。
タマーリンに対抗することも考えなかったわけではない。
一番確実なのは闇から闇に葬ってしまうこと。
しかし、タマーリンは王都の最終防衛手段である以上、その手は使えない。
それに最近では、それすら難しくなってしまっていた。
タマーリンが連れて来た三人の人間の娘、その中でギリと呼ばれる娘は忍びの者達が気配を消して近づいても、その気配を察して視線を向けてくるのだ。
それに遅れてレッドベルが鋭い殺気を向けてくるので、その二人が周りにいる時は近寄ることすら出来なくなっていた。
タマーリン自身、かなり勘が鋭く、こうして身を潜めていた自分が見つかってしまっている。
迂闊なことをすれば返り討ちにあう公算の方が高い。
「もういいか、仕事があるからな」
仕事とはミケラの護衛だ。
「そうですわね、わたくし達も戻りましょうか」
マオの声をかけ、タマーリンはスタスタと広場への道へと歩み出す。
その背中を見送りながら、
「やれやれだ」
と呟き、白虎も護衛の仕事に戻ったのだった。
後書きです
Amazonの罠にはまってまた別のラノベを読み始めました。
転生物なんだけど、本当にいろいろなアイディアが出てきて面白い。
冷静に自分の嗜好を見るに、おれつえー系よりコツコツと進んでいく系が好きかな。
転スラなんかの最初は大した能力が無かったのに、だんだんと能力が増えて行ってと言った感じの話が好きなんだろうな。
学生の頃の嗜好は本の厚さで選ぶだったのに比べたらずいぶんと変わったものだ。
また来週(@^^)/~~~
(Copyright2025-© 入沙界南兎)
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