ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 116
そのまま、魔力感知を使いミサケーノの後を追う。
ミサケーノは魔族でもなければ魔法も使っていないので、本当なら魔力感知で追跡は出来ないはずなのだが、魔力とは違う別の波動が放出されていて魔力感知でも追跡出来てしまう。
「あの力、なんなのでしょう?どこかで感じたことがあるような?」
疑問がつい口から出てしまった。
「あれはオーラの力じゃ」
唐突に声が聞こえてタマーリンがぎょっとする。
声の方に顔を向けると、マオがマオが後ろから付いてきているではないか。
マオは影の翼を使って跳ぶので、翼の羽ばたきの音がしない。
こっそり後ろから付いてこられると、音がしないので判らないのだ。
「いつの間に付いてきましたの?」
「タマーリンの姿がぼやっとしたのに気がついてのう、怪しいと思ったのじゃ」
二人は飛びながら会話をする。
「それでオーラの力とはなんですの?」
マオの言った言葉について聞く。
「オーラの力とは、生命の力じゃ。生き物が生きるための力と言ってよいぞ」
マオが説明し、
「回復魔法も、魔力をオーラ力に変換して傷を治しておるのじゃぞ」
と付け加える。
「魔力を変換して・・・そうでしたのね」
タマーリンはようやく、ミサケーノを追跡出来ているか理由がわかったのだ。
「回復魔法で変換される力でしたのね」
回復魔法を使う場面には何度も立ち会ったことがある。
はぐれドラゴンが王都近くに来て、それを追い払う現場に呼ばれてドラゴンをパラライズで動けなくしたこと等も数知れずやって来た。
そんな現場では兵士が傷つき回復魔法のお世話になるのも付き物なのだ。
「力が強すぎて、回復魔法の力と同じだとは気がつきませんでした」
それ程までに、ミサケーノから放たれている力は力強かったのだ。
「ところでの」
マオが困ったような顔で、
「何故、予はそのようなことを知っておるのじゃ?」
不思議そうに首を捻るマオだった。
「ストップですわ」
唐突にタマーリンが手を上げてマオを止めた。
ミサケーノが止まったのだ。
指を立てて口に当て、静かにするようにマオに合図を送る。
音を立てずに宙を飛び、建物の角を曲がる寸前でタマーリンが止まった。
気がつかれないように角を覗き込むと、忍び衣装に身を包んだ何者かがいた。
その者はミサケーノからミケラとサクラーノへと戻る瞬間を身を潜めて見ている。
タマーリン達には気がついていない。
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