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ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 112

 トランスロットとゆいは少し離れたベンチに座って、ミサケーノが次々に子供達を空に放り投げているのを見ていた。


「あのお姉さん、凄いね」

「うん」

 会話のキャッチボールなどほど遠い、途切れ途切れの会話だったが、それでも二人には充分だった。

 会話のキャッチボールなど望んではいなかったのだ。


 元々トランスロットは会話は得意ではない。

 自分から他人に話し掛けることをに苦手意識すら抱いていた。

 なので、こうして自分の方からゆいに話し掛けること自体、かなり頑張っている。


 ゆいの方は、トランスロット以上の人見知りなので、ぽつりぽつりとでもトランスロットが自分に話し掛けてくれるのが嬉しかった。


「でも、あの人知っているような気がする」

 なんとなく自分の感じていることを口にした。


「知っている人?」

 トランスロットが聞くが、

「判んない」

 と首を横に振る。


 子供達を相手にしている女性から何かを感じるのだが、それが何なのかゆいにはよく判らないでいたのだ。


-・-・-・-・-

【ネビュラ・ナナの領域】


「ちょ、ちょっとミサケーノ、やり過ぎよ」

 ネビュラ・ナナがミサケーノを映した泉の映像を見ながら、ハラハラしていた。


「あの方はナナ様と同類で御座いますから」

 ミームがぼそっと呟く。


「ちょっと、わたしとミサケーノが同類なんかであるわけないでしょ。わたし、あんな無茶はしないわ」

 キッとミームを睨んだ。


「失礼致しました」

 ミームは頭を下げる。

 ミサケーノ以上のことを散々やらかしてきたのは知っているが、それは記憶に封印しておくことにしたのだ。


「なにやら、ミサケーノ様を見てゆいが悩んでいるようですが」

 映像がゆいを映し出す。


「う~ん、たぶんだけど。ゆいの知っているミサケーノはここで魂だけの存在だったミサケーノだけなのよね。人間として活動するミサケーノは見るのは初めてだし・・・その違いがよく判らないのかな?」

 ゆいはネビュラ・ナナの領域以外知らない温室育ち、能力も高くないがそれ以上に経験不足なのだ。

 地上に送り出したのは、ゆいに経験させて成長させる狙いもあった。


「頑張るのよ、ゆい」

 ネビュラ・ナナは映像に映るゆいに応援の言葉を贈った。


-・-・-・-・-・-


                        (Copyright2025-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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