ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 103
休憩が終わって、鬼ごっこの再開だ。
「今度は私がジャンケンする」
ミケラが叫ぶが、
「ミケラはジャンケン弱いからダメ」
マオとサクラーノに却下される。
「わははは、ここはやはり予しかおるまい」
マオがハイテンションで名乗り出たが、
「マオちゃんもダメ!」
ミケラとサクラーノにダメ出しを喰らい、
「うにゅう」
とへこむ。
「なんでじゃ、なんで予ではダメなのじゃ」
「さっきも負けて鬼になった」
「マオちゃんもジャンケン弱い」
容赦ない指摘に、更に落ち込む羽目になる。
サクラーノはサクラーノでジャンケン禁止になっていた。
気が焦って早出ししてしまうのだ。
子供達に、
「サクラーノ、もっとゆっくり出さないとダメだよ」
と言われても直らないので、
「これじゃジャンケンにならない」
サクラーノはジャンケン禁止になってしまったのだ。
ミケラもサクラーノもマオも、ジャンケンへっぽこ組だった。
「どうする?」
「どうしよう?」
「どうするのじゃ?」
三人は顔を見合わせて考えるが、いいアイディアが浮かんでこない。
「そうだ」
ミケラが手をポンと叩く。
「何か思いついた?」
「聞かせるのじゃ?」
サクラーノとマオが期待に満ちた目でミケラを見た。
「むふふふ」
ミケラが怪しい笑いを浮かべると、
「お姉さんに頼むの」
「おお!」
ミケラのアイディアに、感嘆の声を上げるサクラーノ。
「誰じゃ、そのお姉さんと言うのは?」
マオは話が見えず、二人に聞いたが、
「内緒」
ハモった返事が返ってきただけだった。
「じゃ、呼んでくるね」
「くるね」
二人は手を繋ぎ、
「ジャンケンしてくれる人呼んでくる」
と他の子供達に告げて、さっさと走っていなくなってしまう。
〈こんな事で、私の事を呼ぶのはやめてちょうだい〉
物陰に隠れた二人の頭の中に、ミサケーノの声が響く。
「だってジャンケンが・・・」
「お願い・・・」
二人に泣きつかれて、
〈判ったわよ、今回だけよ今回だけ〉
渋々承知する。
子供に泣きつかれると断れないのは、聖女の本能なで仕方ない。
「やった」
二人はその場でキャッキャと喜ぶ。
〈この姿見たらダメとは言えないわね〉
ミサケーノは喜ぶ二人の姿見て、溜め息をつくと共に微笑む。
〈変身のかけ声をして〉
「はーい」
二人は並んで立つと、
「変身させて」
と叫んで片手を上げた。
二人の姿が光に包まれ、一つにまとまると大人の女性の姿に変わった。
「わたし、人間の国の方じゃ神様扱いになっちゃってるみたいだけどさ・・・その神様がジャンケンの為だけに呼び出されてるなんて思わないよね」
ミサケーノは苦笑する。
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タイトルの番号をまあ違えていたので修正。




