ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 101
「それにここに侵入してくる相手に、わたし達天使が敵うはずも有りませんものね」
ここはネビュラ・ナナの領域、ネビュラ・ナナの許可が無ければ入ってくる事が出来ない空間だ。
それを侵入出来る相手となれば、ネビュラ・ナナと同等以上の力の持ち主という事。
非戦闘要員の天使でどうにかなる相手ではない。
「もしも、この領域に侵入者が入ってきたら、私が時間を稼ぐからあなた達は非常用脱出ホールから、別の時空に逃げるのよ。私は待たなくていいから・・・これでもこの世界を支える神の一柱だから、あなた達を逃がした後に逃げ出すくらいの事は出来るわ」
この世界を支える神の一柱であるので、戦う力は弱くても相手がうんざりするくらいの嫌がらせなら出来る。
その間に天使達を逃がす事は出来る。
脱出ホールも天使以外は通る事が出来ない上、無理に入ろうとすればなんの痕跡も残さずに消えてしまうのでそれ以上、天使達が追われる事もない。
ネビュラ・ナナは身体を張って天使達を逃がす為の準備をしっかりと整えていた。
「備えあれば憂いなし、防災準備はしっかりと準備しておかなとね」
自分の領域に侵入されるのを災害と言えば災害だけど、なんか違う気がする。
ネビュラ・ナナはゆいが飛んだ後、足に力が入らなかった理由も説明する。
「長く飛べるように翼の疲れは、手足に肩代わりして貰ってるのよ」
つまり、飛んでいる間の翼の疲労は手足が肩代わりして翼が疲れにくくしているという事なのだ。
それがマオと空中で追いかけっこをした後、ゆいの足に力が入らなかったわけだ。
「でね、回復力も高めてあるから、少しだけ休めば回復するようにしたの」
ゆいの回復力の高さはネビュラ・ナナに与えられた力だった。
「でも、そちらに力を振り分けすぎたから力は見た目通りの力しか出せなくなっちゃったけど」
そう、ゆいなどは見た目は十歳の女の子なので、見た目通りの十歳の女の子の力しか出せない。
元々、ネビュラ・ナナの身の回りの世話や話し相手や遊び相手なので、それほど力は必要としないのでそれで問題なかったのだ。
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「楽しかったか?」
シャムタが声をかけてきた。
「お前が来るなんて珍しいじゃんか」
トランスロットは一人でいるのが好きだったので、この広場にはたまにしか来なかったのだ。
「今日はミケラ達のお守りだから・・・それに、ボクはもう王宮の厩で働いているし」
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