ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 95
「いいんだよ、ボクも同じだから」
家の中を実質取り仕切るやり手な姉と、元気一杯で可愛い妹二人の間に挟まれ、家の中で唯一の男の自分がなんとかしないとと思いつつ、空回りし続けてきた。
運動も得意ではないし、タレントだってまだ発言していない。
心の中の焦りと現実のギャップに嫌になる事なんて何度もあった。
そして、目の前にいるゆいは自分と同じだと感じたのだ。
だから助けて上げたいと思うのだ。
ゆいはトランスロットの言った「ボクも同じだから」の言葉に、一番最初に出会ったのがトランスロットで良かったと心の底から思った。
そして頭を撫でてくれる手の温もりに心安らぐのだった。
「お~い、ミケラ、サクラーノこっちへ来いよ」
シャムタがミケラとサクラーノを呼ぶ。
遊びの誘いだ。
「お兄ちゃんいこ」
「ゆいちゃんいこ」
二人がゆいとトランスロットの手を引いてシャムタの方へと走った。
「なにするの?」
ミケラとサクラーノがシャムタを見上げる。
「今日は鬼ごっこだ」
さっきのあれが、今日の遊びになったのだ。
「おお!」
「やる、やる」
ミケラとサクラーノは鬼ごっこと聞いて、俄然やる気が盛り上がる。
「じゃ、ペアを組め」
シャムタの合図で子供達はペアを組み、お互いの手を握る。
これはタレントの力を封じる為の子供達の考えたアイディアだった。
単独でなら、鬼ごっこでは影移動の出来るミケラ、超加速のサクラーノ、空を飛べるマオは無敵の強さを誇ってしまう。
それでは遊びとしてつまらなくなってしまうから、子供達が知恵を絞って考え出したのがペアを組んで手を握りあい、遊びの最中に手を離したらそこで負けというルール。
これならタレントも使い難くなるので、一人勝ちというのを防げるのだ。
シャムタはまだ小さい弟と妹と組む。
二人ともまだ小さくてみそっかすにされてしまうので、兄であるシャムタが面倒を見るのだ。
案外、いいお兄ちゃんだった。
ミケラはいつもの通りにサクラーノとマオと組む。
「やるぞ!」
「予を敵に回した事を後悔するとよい」
相変わらず、サクラーノとマオのテンションが高い。
「頑張ろうね」
ドンくさいミケラは鬼ごっこは得意じゃないけれど、それでも元気一杯だ。
お城に縛られて、今までこうして皆となかなか遊べなかったので、皆と遊べる事が楽しくて仕方なかった。
トランスロットはゆいと。
二人とも運動は苦手な方なので鬼ごっこには向かないが、流れでの参加だ。
「鬼ごっこって何?」
ゆいに至ってはルールすら知らない。
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