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1話「泉の妖精 その5」

 虎次郎はチャトーラ兄妹の方を睨んだが、それ以上は何もせず立ち上がる。

「姫様、その任、確かに承りました」

 ミケラに深々と頭を下げると、妖精達の方を向く。

「あないいたせ」

 と言われ、妖精達は不思議そうに首を捻る。

 虎次郎が何を言ったか判らなかったのだ。

「案内して下さいって言ったんだよ」

 ミケラがすかさず言葉の意味を翻訳して伝えた。

「どこの国の言葉だよ」

 ミミが怒る。

「怒っても仕方ないじゃん、付いて来るじゃん」

 妖精達が先頭を切って飛ぶ。

 その後をミケラ達が追う。

「姫様、ほらよ」

 チャトーラがミケラを抱き上げて走る。

「ありがとう」

「いいってことよ、俺と姫様の仲じゃねえか」

 チャトーラが笑い、チャトーミも横を走りながら笑う。

 ミケラも「あはははは」とチャトーラに抱きかかえながら両手を広げて笑う。

「ほら着いたよ」

 少し走った後、ミミ達が止まったのでミケラ達も止まる。

「大ガエルは泉の中に身を潜めているよ。獲物が泉の水を飲みに来たところを襲うのさ」

 ミミが忌々しそうに説明する。

「大丈夫、虎次郎?」

 ミケラが虎次郎の側まで歩いて、心配そうに見上げる。

「心配無用」

 と言って虎次郎は一人で泉に向かう。

 泉はそこそこ広く、大ガエルでも身を潜めるのに充分だった。

 何食わぬ顔で虎次郎は泉の側に寄る。

 突然、大ガエルが泉の中から姿を現し襲いかかってきた。

 しかし、そのことを既に小妖精に聞いていた虎次郎は

「瞬歩」

 瞬歩で一瞬にして間合いを取り、大ガエルの攻撃は空を切った。

 虎次郎は背中の刀を抜くと刃のない峰の方を下に向ける。

 対峙する大ガエルと虎次郎。

 確かに大ガエルは大ガエルと言われるだけあってかなり大きく、ミケラどころか虎次郎さえも一飲みにしてしまえるほど巨大さだ。

 しかし、虎次郎は大ガエルと対峙しても臆する様子を見せず、静かに刀を構え大ガエルを見つめる。

 互いに相手の出方を見るように動かなかったが、先に動いたのは大ガエルの方だった。

 僅かに後ずさったのだ。

 虎次郎から発する気迫に、本能が戦ってはいけない相手だと囁いたのだ。

 その僅かな動きを虎次郎は見逃さなかった。

 流れるようなきれいな動きで大ガエルとの間合いを詰めると、手にした刀が一閃する。

 大ガエルは頭に大きなたんこぶを作ってその場に倒れた。

「流石旦那、見事な腕だねぇ」

 チャトーラが感心し、チャトーミも「そうだね兄ちゃん」と手を叩く。

 当然、ミケラは拍手喝采である。


著作権表記追加                       (Copyright2021-© 入沙界 南兎)


2023/09/24 一部修正



                     (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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