ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 87
「ミケラがどうかしたのかい?」
ミケラの名前が出てきたので、問いただすお妃様。
「えっ、あの・・・と、砦の兵隊がミケラ様を見つけて、と、砦にお連れしたそうです。今、タマーリンがお迎えに行ってます」
お妃様の圧に、タジタジとしながら説明するモモエル。
しかし、お妃様はモモエルが僅かだが目を逸らしたのを見逃してはいなかった。
「何か隠しているね・・・とは言え、この子やタマーリンがミケラを害することをするはずもないし・・・わたしにも言えないことか?」
お妃様は素早く状況を判断する。
「それはご苦労だったね・・・隊長、聞いたね?引き上げるよ」
お妃様が指示を出す。
モモエルは、なんとかこの場が収まってほっと溜め息をついた。
パァァァァン
破裂音と共に、空の上で青い煙が散った。
隊長が、森の中に入っていった近衛兵達に帰還の合図を送ったのだ。
しばらくすると、森の中から近衛兵達が姿を現す。
「なんじゃ、なんじゃ。今の煙は、なんなのじゃ!」
合図にマオも森の中から飛び出してきた。
「おっ、なんじゃあの船は!なんで船があんな所におるのじゃ!」
公園の近くに着陸している船を見つけて、目を丸くする。
隊長の下に走る近衛兵の頭上を越え、マオは船を目指して飛ぶ。
以前は人が走る程度の速さしか飛べなかったが、タマンサの闇を吸い込んで、飛ぶ速さがかなり増したのだ。
飛んでいる最中に、トランスロットとゆいが来ているのを見つけた。
「二人とも来ておったのか」
二人の側に降り立つ。
ゆいは咄嗟にトランスロットの後ろに隠れた。
「もういい加減、予に馴れたらどうじゃ」
怒るマオだが、
「・・・」
トランスロットの後ろに隠れたまま、ゆいは下を向いて返事をしなかった。
「もう何日目じゃ」
そんなゆいにマオは怒る。
「ひっ」
ますますゆいは萎縮してしまう。
一緒に生活するようになって数日経つが、押しの強いマオが苦手なのだ。
「もうよい」
それだけ言うと、マオはそれ以上何も言わなかった。
陽気で押しの強いマオと、人見知りで不器用なゆいとは対照的だったが、ゆいが不器用なりにミケラやサクラーノの面倒を見ようとしていることに、マオは好感を持っていたのだ。
なので、ゆいの人見知りにはこれ以上、とやかく言うつもりはなかった。
「いいかい?」
そこへお妃様がやって来た。
「ミケラとサクラーノは見つかった。砦の兵士に保護されて、今、タマーリンが迎えに行ってるそうだよ」
お妃様が微笑みながらトランスロット達に伝える。
「良かった」
「おおそうか、見つかったか」
トランスロットとマオは喜び、ゆいもトランスロットの影に隠れながらほっとする。
「タマーリンが帰ってくるまで時間もかかるだろうから、引き上げるよ」
お妃様の合図と共に、チャトーラ以外の船に乗ってきた者達は船に乗って去って行った。
「お妃様、帰った」
「よかった」
ほっとする白妙と黒妙。
「何がよかったのだ?」
唐突に、二人の背後から声がした。
二人が振り向くと、
「空牙さん」
二人の直接の上司になる上忍の空牙が立っていた。
「忍びが背後を取られるまで気がつかんとは、愚か者共!」
一喝されると共に、二人とも瞬時に縄で絡め取られて身動きが取れなくなる。
悲鳴を上げる暇もなく猿ぐつわまで噛ませられた。
空牙は二人を両肩に担ぎ上げて森の近くで待っていた馬車に二人を放り投げ、そのままお城に向かう。
次の朝、城内を巡回していた兵士がお妃様の部屋の前で、口から魂が半分抜けかけた白妙と黒妙を発見したと言う。
後書きです
如何でした、ミケラ行方不明事件の裏でこんなことがありましたというお話です。
短編の方は、自主的文字数制限の都合でレッドベルの場面を削除したので、こちらで少し出させてもらいました。
子供が行方不明になるというのは、本来大騒ぎになることなんですよね。
そうそう、ゼルダのティアキンをぼちぼち遊んでますが、ティアキンの戦闘は苦手なので逃げてばかりいます。
それでも、何とかなっているのが凄いゲームだと思う。
また来週(@^^)/~~~
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