ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 84
「船をお出し」
お妃様が即決する。
「はっ、その為の人員を只今、集めている最中で御座います」
執事の言葉が終わるのとほぼ同時に、魔法使い達がゾロゾロとやって来た。
砦で使われている空飛ぶ船が一隻、お城にも配備されているのだ。
しかし、船を飛ばすのには最低でも五人魔法使いが必要になる。
乗船する人数が増えれば、それに合わせて魔法使いの人数も増えるので、乗船人数が判らないからと多めに寄越したようだ。
「砦にも連絡致しますか?」
執事が尋ねた。
「砦は戦いが終わったばかりで、その修理で大変だろうから止めておきな」
魔獣が砦の大門を破壊して、中で暴れ回ったので被害が大きかった。
一部、サビエラを助けるために武茶士が壊したのだが。
「船の準備が出来るまでに、森での捜索に長けた者を集めておくれ」
お妃様が指示を出す。
「そちらも手配済みですので、もうすぐ揃うと思います」
執事の返事に、お妃様は満足げに頷く。
兵隊達も足早にやって来て、お妃様の前に整列する。
「これだけかい?」
並んだのは十五名だった。
全員、動きやすさを優先した軽装だ。
「はっ、大至急、森探索に優れたものをと言うご指示だったので、集められたのがこれだけでした」
隊長の男がお妃様に説明をする。
近衛は武勇を優先するので、探索が出来る者が少ないのだ。
一般の兵士から募ればもっと多いだろうが、それでは時間がかかってしまう。
「今は時間の方が惜しいから、この人数でも仕方ないね」
お妃様が了解の合図を出す。
「総員、駆け足!」
隊長が号令をかける。
「はっ!」
兵士達は船の発着場へと駆け足で向かった。
「それじゃあ、行こうか。あんた達も付いておいで」
お妃様はトランスロットとゆいを連れて歩き出し、チャトーラも続く。
向かったのは兵士達と同じ、船の発着場。
「準備は整いました、どうぞ」
係員がお妃様を恭しく出迎える。
「ほら、乗るよ」
トランスロットとゆい、チャトーラはお妃様の後に続いて船に乗り込む。
兵士達は甲板に整列して、お妃様を出迎えた。
「発進おし」
お妃様の声が響く。
「浮上」
舵輪を握る船長の命の元、船体を浮かせる魔法使い達が詠唱を始め、終わると同時に船体が浮上始めた。
「うおぉぉ、凄え!船が浮いたぞ」
チャトーラが大はしゃぎだ。
「風、入れ」
大はしゃぎのチャトーラを無視して、船長が次の指示を出す。
船体の中央の箱の前に座っていた魔法使いが詠唱を始め、箱の中に風を発生させる。
発生した風は、船尾から吹き出し船を前に押し出す。
「目的地、取水場公園、全速前進」
船長が舵を切り、後方から風が勢いよく吹き出し、船は高速で空を駆けた。
船は歩いて二時間の距離を、十分ほどで到着したのだった。
公園にいた家族連れ全員が、空を船が飛んできたので驚いて見上げている。
砦で何度も見ているレッドベルは平然としていたが、隣にいるチャトーミは脳天気に船に向かって手を振っていた。
後書きです
「ちょっと作者!」
「ナナ様、またサクハラですか?」
「そんなことどうでもいいわ、優しき疫病神って何よ!」
「言って良いんですか?」
「な、何よその勝ち誇った笑みは?」
「これ、こないだミームにもらったやつ」
「うっ、それはミームが作ったという・・・」
「そう、ナナ様、やらかしリスト。
某年、某月、某所、魔王軍が進出。
進路上にある某村は壊滅の危機に。
そこへナナ様が現れて、流星雨にて魔王軍を退ける」
「フフン、さすが私」
「魔王軍が退いた後も流星雨は止まら ず、村周辺はクレータだらけに。
元に戻すのに百年以上かかる」
「・・・」
「次は、某年某月・・・」
「わかった、わかったからそれ以上言わないで」
「ふふふ、正義は勝つ」
「文句を言ったお詫びに、ミームと二人で歌を歌うわね」
「えっ」
・・・プツン
また来週(@^^)/~~~
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