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ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 77

「兎に角入って、家族に紹介するから」

 家族に紹介すると言っても、殆どが顔見知りである。

 ミーランダのことを知らないのは、マオかゆいくらいのモノだろう。



 ロレッタがミーランダを家族の前に連れて行くと、最初に反応したのはミケラだった。

「ミーランダ、わたし、お城に帰らないから」

 とそっぽを向く。



 それを見て、困ったような顔でロレッタの方を見るミーランダ。

「大丈夫よミケラ、ミーランダはお城に連れ戻しに来たんじゃないの。お妃・・・お婆ちゃんに言われて、お姉ちゃんのお手伝いに来てくれたのよ」

「お姉ちゃんのお手伝い?お城に戻らなくていいの?」

 半信半疑で、ミーランダの顔を見上げる。



「うん、手伝いに来ただけだから」

 安心させるように、ミーランダは微笑む。

「良かった」

 ミケラも安心したようだ。



「今言ったように、今日からミーランダがわたしの手伝いをしてくれることになったから宜しくね」

「宜しく」

 ミーランダが軽く手を上げる。

 殆どが顔見知りなので、堅苦しい挨拶は無し。



「うちの家族は殆ど知ってるからいいとして、最近家族になったマオとゆい」

 二人を立たせて紹介する。

「マオちゃんなら知ってる、あの鬼ごっこの時、空飛んでいた子だよね」

「わはははは、予の雄志を見知っておったか。良い心がけじゃ」

 無駄に偉そうにするマオ。



「そしてそっちの人間の子がゆいよ」

 ゆいは知らないに人を見て、腰が引け気味になりながらぎごちなく頭を下げた。



「人間の子?」

 王都に人間は少なく、その子供となるとほぼ見かけない。

 噂になるはずだが、そんな噂聞いたことがない。

 そんなミーランダの顔を見て、

「う~~ん、どうしようか?」

 どうするか困って、ロレッタはタマンサを見た。



「いいんじゃない、ここに来るなら判ってしまうことだし」

「そうね、じゃあ」

 ロレッタは覚悟を決める。



「ミーランダ、驚かないで聞いてね」

 ロレッタはミーランダの両肩を掴み、真剣な目で見た。

「ど、どうしたの?」

 あまりの真剣さに驚くミーランダ。



「あの子、実は天使なの」

 意味が判らず、目が点になるミーランダ。

「やだもう、冗談やめたよ。天使だなんて、ロレッタは何歳よ」

 浪速のおばちゃんのように、ロレッタの肩をパンパン叩くミーランダ。



「証拠を見せるわ。ゆい」

 ゆいに声をかける。

 声をかけられたゆいは、何故自分に声をかけられたかが判らず、と言って聞き返そうと言うことも思い浮かばないでただオロオロいする。



「翼を出して欲しいんだと思うよ」

 オロオロしているゆいに、トランスロットが耳元で囁く。

「う、うん」

 返事と共に、ゆいは翼を広げた。

 純白の翼が、ゆいの背後に広がる。



「うぉぉぉ、本当に天使だ!」

 ミーランダは、はしたないと怒られそうなくらいの驚きの声を上げる。

「天使だよ、天使だよ」

 ロレッタの肩を掴んで、ガクガクと揺さぶる。



「判った、判ったから落ち着いて」 

 なんとかミーランダの手から逃れたロレッタは、落ち着かせようとする。

「悪い、興奮しすぎた。あはははは」

 朗らかに笑う。


                        (Copyright2025-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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