ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 76
「ミケラ起きて、朝よ」
身体を揺すぶられて、
「ミーランダ・・・もうちょっと・・・あれ、お姉ちゃん・・・?」
自分を起こしたのがミーランダではないのに気がつき、寝ぼけ眼で起き上がる。
ミケラの侍女は、ロレッタの他に四人いる。
週六日の内、五日間の昼間はロレッタがミケラに付き添い、残りを他の四人が受け持ってくれていた。
四人の内三人は城住まいだったが、ミーランダはロレッタと同じく街から通いだ。
家は雑貨屋をやっていて、四人兄妹の末っ子で行儀見習いで侍女をしている。
ロレッタより一つ上で、小さい頃はよく遊んで貰った間柄だった。
「仕方ないわね」
溜め息一つつくと、
「ほら、起きて着替えて」
ロレッタに言われて、ミケラは周りを見回す。
「あれ、ここお城のお部屋じゃない?」
寝ぼけた頭がはっきりしてきて、お城の自分の部屋じゃないのに気がつく。
「お、お姉ちゃん・・・ここお城じゃない・・・」
ミケラの顔が満面の笑顔になる。
「やった、お城じゃない、お城じゃない!」
はしゃぐミケラに、
「はしゃぐの止めなさい、ミケラ」
ロレッタに止められて、ベッドからミケラはロレッタの顔を見上げた。
「ちょっと聞きたいんだけど、ミケラ。あんた、毎朝ミーランダに迷惑かけてないわよね」
と聞かれ、
「迷惑なんて・・・か、かけてないよ」
目が泳ぐミケラ。
バレバレなので、朝からお説教タイムと相成った。
「おはようございます」
みなで朝食を食べていると、来客が有った。
「はーい」
ロレッタが応対に出ると、
「おはようロレッタ」
「あらミーランダ、お城はいいの?」
来客は、先ほどから名前の出てくりミーランダだった。
「今日から、こっちに来るように言われたのよ」
ミーランダが簡単に説明する。
「そうなんだ」
ミーランダは、さっき説明したようにロレッタと同じ街からの通い。
他の三人は城住まいなので、夜は完全にその三人に任せきりで、ミーランダは朝と夜の三人への引き継ぎの役をして貰っていた。
ロレッタの来る日はそのまま家に帰り、夕方にお城に来るアルバイト的存在だ。
「こっちに来て、何するの?」
ロレッタが疑問に思って聞く。
「夕べ、突然お妃様が来てね、
「ミケラはしばらくタマンサの家にいることになったから、明日からタマンサの家に行ってくれ。
タマンサの家は、最近、家族が増えたから手伝いをして欲しい」
て言われたの」
ミーランダの話を聞いて、
「お妃様らしい」
とロレッタは苦笑する。
(Copyright2025-© 入沙界南兎)




